• Home
  • 聖樹巡礼
  • 宇宙樹の庭
  • こころの木
  • 木に咲く花の文様
  • 木の芸術家
  • 木の図書館

熱田神宮のクスノキ Camphor in Aichi

白蛇が棲むクス、大地の気あふれるクス  
刀剣の神様が守る神社で会いたい「七本楠」 


_MG_6269.jpg_MG_6276AtsutaTree.color.jpg

_MG_6532AtutaUraKusu.color.jpg
DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(ケヤキ科・落葉高木)
▽学名:Cinnamomum camphora
▽樹齢:約1000年(本殿のそば)
▽樹高:約20.5m/幹周り:約7.7m
▽所在地:愛知県名古屋市熱田1-1-1
 

熱田神宮のご神体は、三種の神器の1つ「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」です。刀剣の神様がいらっしゃる神社にはどれほどの力強い気を感じるだろうか、、、と思っていましたが、境内はとても静かで清らかで、穏やかな空気が流れていました。さあ、「熱田神宮の七本楠」はどこにある? 鎮守の森を散策しながら探してみましょう。

【木の特徴】
境内をのんびり歩いているうちに本殿についてしまった。あれ、クスノキは? 見渡すと本殿の鳥居のそば、柵の中に立っていました。樹齢千年という大樹なのに、気づかなかった・・・。そう、私はとても有名なご神木を素通りしてしまうことがよくあります。このクスノキには白い大蛇が棲むというので、木の根元には卵が供えられていて、この地で大切にされているとわかる一樹でした。あらためて手を合わせます。

大きな木と初めて会うとき、こんなふうにスッと通りすぎることが多々ありますが、千年も生きた木と出会ってすぐに心通わせようと思うほうが人間の驕りだと思うようになりました。数年経って、二度目にお参りしたときはちゃんと出迎えてくださいました。クスノキさんときちんと正面を向き合って、ご挨拶できたように思います。(写真上①)

境内に立つ「七本楠」をすべて見たいと思い、神主さんに聞くと、社殿の後方にすばらしいクスノキがたくさんあるとのこと。清水舎へと向かう「こころの小径」を歩いていくと右手、鬱蒼とした鎮守の森の中、私は出会ってしまった。運命の木に。苔むして、荒々しい気を放つクスノキ(写真下②)。大地の奥底にはびこる根から生命エネルギーを放出し、幹を通して上昇していく。太い幹は右に曲がり、左に曲がり、樹冠は枝を縦横に広げて空を覆う。本殿そばのクスノキの静けさとは正反対の力強いパワーがビシビシ飛んできます。この野性の力こそ、私がご神木に求める神聖なエネルギーだ・・・。目を閉じて、時間の流れを気にすることなく、木の放つ気を感じていると、心と体がスーッと鎮まっていくよう。と、同時に、大地に根を張って立つ、大きな木と一体化するような感覚。それは、人生という大地にどっしりと立ち、自分を信じて生き抜く力で心身が満たされていくようでもありました。

★この木を見るポイント⇒ ①本殿そばのクスノキは枝の間に小さな祠(ほこら)がある、白い蛇と会えたらラッキー。②社殿裏手のクスノキは苔むして、野性の荒々しいパワーを感じてください。

【歴史を伝える】
熱田神宮の創祀は、草薙神剣の御鎮座に始まります。御祭神は熱田大神(あつたのおおかみ)。相殿神(あいどのしん)の1人、素戔嗚尊(スサノオノミコト)は日本に自生する木々を誕生させた神様ですね。『日本書紀』にこんな話があります。

「スサノオノミコトがヒゲを抜いて日本中にまき散らすとスギになり、胸毛を抜いてちらすとヒノキになり、お尻の毛はマキノキ、眉毛はクスノキになった」。

つまり、熱田神宮の境内にはスサノオノミコトの眉毛がたくさん生えている!想像すると楽しくなりますね。境内には他にも注目したい不思議な木があり、花が咲いても実のならない「ならずの梅」、茶人の愛好する「太郎庵椿」、空海(弘法大師)が植えたとされる「大楠」など。ぜひ、探してみてください。

【クスノキの教え】
しっかりと人生の根を張りなさい、と木は教えています。ひょろひょろの根しか生えていないと、遠くへ枝を伸ばせませんし、ちょっとした風が吹いても倒れてしまいます。"あなた"という「木」の根は?自由に、どこまでも、自分の行きたい方へ進むために、大地をがっしりとつかんでください。堂々と立つあなたのもとには小さな動物たちが集まり、根元では美しい草花が育つでしょう。

【この木に会いに行こう!】
名鉄「神宮前」駅から徒歩約3分。①本殿の鳥居そばの柵の中。②社殿裏手、清水舎に向かうこころの小径沿い。

(2019年7月撮影)

明治神宮の夫婦楠 Camphor in Tokyo

2本のクスノキが仲よく並ぶ「縁結びの木」  
夫婦円満、家族の幸せを守ります 


s-kusunoki meijinguRIMG0008.jpg  
DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(クスノキ科・落葉高木) 
▽学名:Cinnamomum camphora 
▽樹齢:約100年
▽樹高:約25m/幹周り:約6m
▽所在地:東京都渋谷区代々木神園町1-1 明治神宮 本殿前

1920(大正9)年、明治神宮が創建当時に献上され、本殿前に植えられた2本のクスノキ。「夫婦楠(めおとくす)」と呼ばれて、縁結び、夫婦円満、家族の健康安全のご加護をくださるご神木として親しまれています。

【木の特徴】
原宿駅から鳥居をくぐり、鎮守の森をのんびり歩いて本殿へと進むと、まんまるい樹冠をしたクスノキが見えてきます。注連縄で結ばれて立つ姿は手をつないだ夫婦みたいです。離れて見ると、こんもりと繁った樹冠はまあるくて、1本のクスノキのように見える姿も、"夫婦一体"の象徴のようです。私が訪れたとき、ちょうど神官さん、花嫁さん花婿さん、家族の方々が夫婦楠の間を通られ、ご縁が強く結ばれていくように見えました。
★この木を見るポイント⇒ 本殿への入口から見ると、まるで1本に見える。近くに寄ると2本が並んで立つ。

【歴史を伝える】
原宿駅の周辺も大きく変わりましたね。久しぶりに行くと、駅から明治神宮への道が少し近くなったように感じました。大きな鳥居をくぐって参道を歩く、両脇に鎮守の森が広がります。ここは人が創った森です。かつては荒れ地だったこの地に森を創ろうと、全国から奉献された約十万本が十一万人もの人々の手によって植えられました。森づくりの計画を立てるにあたり、林学博士の本田静六氏や造園学の祖といわれる上原敬二氏たちが主木に選んだ樹種のひとつがクスノキでした。そのほか、カシ、シイなど、もともとこの地域に生育していた木をメインにしたことで、これほどの緑豊かな森となりました。木々は今では人の手で管理をしなくても、自らの力で成長し、美しい森を保ち続けています。

【夫婦楠の教え】
愛すること、信じること、そして、感謝することをこの2本のクスノキは教えてくれます。あなたと出会えたことに「ありがとう」、そばにいてくれて「嬉しいよ」。時には声に出して、伝えてみませんか?

【この木に会いに行こう!】
JR山手線「原宿」駅から右手すぐの明治神宮境内。本殿の夫婦楠まで徒歩約5分。

【クスノキとは?】
クスノキは"スサノオノミコトの眉毛"。『日本書紀』巻第一神代上に書かれてあるんです。素戔嗚尊(スサノオノミコト)が出雲の国で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したあとの様子として。「スサノオノミコトが、ヒゲを抜いて散らすと<スギ>になり、胸毛を抜いて散らすと<ヒノキ>になり、お尻の毛は<マキ>になり、眉毛は<クスノキ>になった」。これらは日本に自生する木々。神さまのカラダから日本の木は生まれたと思うと楽しいですね。

(2009年5月撮影)

神内神社の「蘇りの木」 Campher in 熊野

ご神木の胎内くぐり。クスノキの根の間を抜けると
新しい命が芽生える、わたしが生まれる 

20180523_150737_R.jpg
DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(クスノキ科・落葉高木) 
▽学名:Cinnamomum camphora 
▽樹齢:不明
▽樹高:不明
▽所在地:三重県南牟婁郡紀宝町神内

【木の特徴】
熊野の旅、いちばん心打たれた木の神さまです。「蘇りの木」という名前のとおり、この大樹の間をくぐると新しい命をいただくご利益があると言われて、地元のTakakoさんと一緒にくぐりました。どっしりと大地に根づいた幹の間に狭い空間があり、体をねじこむようにぐいっと。胎内から産道を通ってこの世に生まれ直した、ような感覚、新しい世界への誕生!のような。このご神木に会うために、私はまた何度でも熊野に来るだろうな、と感じた、神秘的な大樹です。(2018年5月23日撮影)
★この木を見るポイント⇒クスノキの胎内くぐり。

【歴史を伝える】
神内(こうのうち)神社は安産の神さまとして知られる、別名「子安神社」。

【この木に会いに行こう!】
JR新宮駅からバスで20分。紀宝町ウミガメ公園から車で約10分。

20180523_145816_R.jpg

高原熊野神社の大クスノキ Campher in 熊野古道

圧倒される大きさを誇るご神木 
森の斜面にどっしりと立つ 

IMG_1586_R.JPG
DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(クスノキ科・落葉高木) 
▽学名:Cinnamomum camphora 
▽樹齢:約1000年
▽樹高:約29m/幹周り:約10.35m
▽所在地:田辺市中辺路町高原1120

【木の特徴】
とにかく大きい! このクスノキの前に大人6、7人が横並びで立てるほどの幹周りを想像してみてください。社殿後方の斜面に立ち、根をしっかりと張っています。写真でその迫力を見せられないのが残念ですが、森の王様といった堂々たる姿。幹の裏側にまわるとその大きさがさらに迫ってきます。境内には3本のクスノキのご神木が立っています。(2018年5月20日撮影)
★この木を見るポイント⇒大きく根を張る。境内に3本の大楠。

【歴史を伝える】
熊野・高原地区の産土神(うぶすながみ)。熊野古道の中辺路(なかへち)沿いにあり、「不寝(ねず)王子」と「大門(だいもん)王子」との間に位置します。応永9(1402)年、ご神体が熊野本宮大社から勧請されたと伝わっています。

【この木に会いに行こう!】
熊野古道・中辺路(なかへち)、熊野三山の聖域への入口「滝尻王子(たきじり・おうじ)」から約3.7キロ。バスの場合は、JR「紀伊田辺」駅から龍神バス「熊野本宮」行きで約40分、「滝尻」下車、熊野古道を徒歩1時間45分。タクシーの場合は、JR「紀三井寺」駅からタクシーで約5分。高原霧の里からの眺めも楽しみたい。

 
IMG_1627_R.JPG

蟻通(ありどおし)神社の2本のクスノキ Camphor in 熊野

神門すぐには「火消し」のクスノキ
境内中央には「縁結び」のクスノキ

IMG_1579_R.JPGIMG_1578_R.JPG



















DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(クスノキ科・落葉高木) 
▽学名:Cinnamomum camphora 
▽樹齢:不明
▽樹高&幹周り:ともに不明
▽所在地:和歌山県田辺市湊19-6
 
【木の特徴】
地元で御霊(ごりょう)さんと呼ばれる小さな神社に、2本のご神木が立っています。
<1本目:上左写真>神門をくぐると目の前に、馬の像を従えたクスノキがそびえています。幹には大きな傷あとがあります。安政元年、大地震のために火災が起きたとき、このクスノキの幹や枝から白水が噴き出し、同時に風向きが変わり、延焼をまぬがれたことから、「霊樟(れいしょう)」と崇拝されています。
<2本目:上右写真>境内の中央に立つご神木。根元は1つで、途中から2本に分かれて伸びる「連理(れんり)※」の姿をしています。こうした特徴を持つご神木は「縁結び」のご利益があるとされ、注連縄にはたくさんのおみくじが結ばれていました。(2018年5月19日撮影)
★この木を見るポイント⇒神門を入ってすぐのクスノキは裏側に傷あと、木のまわりの馬、シカ、ヤギ。境内中央にあるクスノキは1つの根から2本の幹が成長する縁結びの姿。

【連理のご神木とは?】
1つの根から2本の幹が伸びる木、また、別々の2本の木が途中で1つにつながった木を「連理の木」と呼びます。蟻通神社のクスノキは前者の形。連理のご神木は、縁結び、夫婦円満、男女和合などのご利益があると崇拝され、日本全国にあります。

【この木に会いに行こう!】
JR「紀伊田辺」駅から徒歩約10分。

【歴史を伝える】
「蟻通(ありどおし)」という神社の名前にまつわる故事。昔々、紀州田辺に外国の使者が訪れ、「法螺貝に1本の糸を通してみよ、もしできなければ、日本国を属国にしてしまうぞ」と言いました。ひとりの若い神様が蜜(みつ)と蟻(あり)を使って、見事に糸を通しました。それを見た外国の使者は「日の本の国はやはり神国である」と恐れ、その知恵に感服して逃げて行きました。蟻によって法螺貝に糸を通したことから「蟻通しの神」と呼ばれ、知恵の神として崇拝されることとなりました。

20180519_174146_R.jpg20180519_174236_R.jpg神門をくぐってすぐの霊樟のまわりに注目。シカ、ヤギ、馬を発見!
1  2  3  4  5