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東根の大ケヤキ Zelkova in Yamagata

小学校の校庭で微笑んでいる、日本一の母欅 
根元で芽生えた小さな苗木を子供たちが育てています 

s1 IMG_0001.jpg DATA of TREE
▽樹齢:約1500年以上(国指定特別天然記念物)
▽樹高:28メートル
▽幹周り:15.77メートル
▽所在地:山形県東根市本丸南1-1-1 東根小学校校庭内
▽会いに行くには:JR山形新幹線「さくらんぼ東根」駅から、山交バスで「村 山駅前」行きで6分、「三日町」下車、徒歩約10分。

そのケヤキのことは人から聞いて知っていた。日本一の大きなケヤキ。知人が 訪ねたときは冬だった。小学校の校庭内に立つという大ケヤキまで行くのは結 構遠い。車から降り、東北の凍てつく寒さの中を少し歩いた先に、白い氷の巨 塔が立っていた。葉を落とした大樹に降り積もった雪は枝々を純白に染め、天 に聳えるように立つ姿は神々しく、生命の神秘を見たようだったとその人は言 った。だから、私の心の中にある「東根の大ケヤキ」は孤高の大樹だった。誰 も求めず求められず、ただ一樹、凛と立ち続ける。容易に人を寄せつけない老 樹の厳しさのようなものを抱くケヤキだと思い込んでいた。ところが、その話 を聞いてから約9年、やっと巡り合う機会を得て、大ケヤキの前に立ったとき、 その印象があまりにも違うことに驚いてしまった。

大ケヤキは孤独ではなかった。大勢の人の愛情をたっぷりと受けて微笑んでい た。訪れたのが6月、新緑の美しい初夏であったことも大ケヤキを明るい雰囲 気に見せてくれたのだろう。駐車場から歩いて向かうと、子供たちの楽しそう な声が聞こえ始め、その朗らかな響きの中、目の覚めるような緑色の樹冠が目 に飛び込んできた。大ケヤキは東根小学校の校舎の前に、どっしりと根を張り、 堂々たる姿で立っていた。圧巻はそばに飾られた注連縄で、長さ16メートル、 中心部の直径1メートルという巨大なものだ。ご神木として崇拝されている様 子がよくわかる。
ちょうど体育の時間だったのか、子供たちが元気に走り回るのを嬉しそうに見 守っていた。校舎の壁面には「夢きらり はじける笑顔 けやきっ子」と描か れている。大ケヤキは柵で囲まれていたが、太い根を守り、大地の水が幹から 枝々まで行き渡るように工夫されていた。根元にある大きな洞の内側が水の供 給のために整えられているのだ。柵で囲まれた多くの巨樹は「入るなよ」と、 柵を作った人間たちの横柄な拒絶感を表すようで好きではないのだが、大ケヤ キを囲む柵は「みんなでケヤキを守って長生きさせよう。見に来る人たちも協 力してくださいね」というあたたかな感情が伝わってくるようだった。この素 晴らしい大ケヤキを誇りに思い、大勢の人に末長く訪れてもらえる存在にした いという熱い思いも伝わってきた。
大ケヤキを眺めていると、近所の女性が出てきて、大ケヤキはまだ生長を続け ていると教えてくださった。少し前に私有地まで根が張ってきたとき、みんな で土地を差し出して、大ケヤキがもっと自由に根を伸ばせるように協力なさっ たそうだ。「うちの土地が小さくなったけど、まあいいよ」とその女性は豪快 に笑った。大ケヤキはこの地で暮らす人たちの愛情に包まれて生きていた。ほ んの一瞬立ち寄るだけの私でも、大ケヤキの幸福感がしっかりと伝わってくる。 巨樹は春夏秋冬、会いに来なければ本当の姿はわからないのだと思う。
かつてはもう一本、ケヤキが立っていたそうだ。父欅(ちちけやき/雄槻=お つき)と母欅(ははけやき/雌槻=めつき)が二本、仲良く並んで立っていた が、明治18年(1885)父欅のほうが枯れてしまったという。母欅は愛する夫の 分まで長生きしようとしているのかもしれない。それにしても樹齢1500年以上 といわれるほどの老木には見えない。勢いよく緑を繁らせ、大きく手を広げる ように枝を伸ばして、子供たちを見守り、穏やかに、どっしりと立つ大ケヤキ。 この土地の守り神であり、まさに母なるケヤキである。

根元には小さなケヤキの赤ちゃんが芽生えていた。ケヤキの芽は子供たちがプ ランターで育て、ある程度大きくなったら、ひとりひとりが家に持ち帰って大 きく育てていくという。こうして、大ケヤキは子孫を残し、命は永遠に紡がれ ていく。育てる子供たちもまた、木の命は後世に伝えられ、自分たちの命もま た巡っていくことを実感していくのだろう。(2014年6月4日撮影) 

s2 IMG_0070 (3).jpg更新日:2017年3月16日
初出:nifty有料メルマガ「おとなの学び場」第9回 2014年10月21日号


大滝のカツラ katsura in Yamagata

樹齢約400年、水の気が滴り落ちてくる 
鬱蒼の茂る森に立つ神宿るカツラ 


sIMG_0193.jpg DATA of TREE
▽樹齢:約400年
▽樹高:31メートル
▽幹周り:13.2メートル
▽所在地:山形県東根市関山字滝沢山3172
▽会いに行くには:国道48号線、大滝ドライブインから下流にある橋を渡ると まもなく。

巨樹が立つ森に入ると、不思議な音を耳にすることがある。そのとき聴こえて きたのはチョロチョロ、サワサワサワ......。水が流れる音だろうか。小川の せせらぎでもなく雨の雫の音でもなかった、その音色の正体は?

水の神様が宿るカツラの木。

今まで出会ったカツラの中で、いちばんカツラらしい。それでいて、木という生命に姿をかえて立つ、神のような、精霊のような、清らかな水の気に満ち満ちた巨樹であった。「大滝のカツラ」。樹齢は約400年。


鬱蒼と茂る森を背景に、水の気、緑の気が充満した巨樹はどっしりと、神秘的 な姿を見せて立っていた。無数のヒコバエが集まり、しっかりと癒着している ため、一本の太い幹のように見える。"大滝"というのは近くにある滝の名前だ が、滝のように水の気が滴っているようにも見える巨樹だ。この写真、緑色の 水膜がかかっているように見えないだろうか。木の前ではそれほど靄(もや)がかかっているようには見えなかったのだが、写真に撮ると水の気でベールをかぶったようになった。木のちょうど裏手に坂道があり、カツラをぐるりと一周眺めることができる。どこから見ても、水の気がこの巨 樹の周辺一帯を覆っていた。梅雨の晴れ間の暑い日だったが、木を前にしていた間、絶えまなく、清々しいひんやりとした風が吹いていた。水の神様はたしかにここにいた。2014年6月撮影。

山五十川の玉杉(たますぎ)Cedar in Yamagata

遠くから見ると玉のような樹冠
根元は苔のスカートをはいています

sIMG_8580 tamasugi1.jpgsIMG_8618tamasugi 2.jpgsIMG_8632tamasugi 3.jpgsIMG_8612tamasugi koke.jpg

sIMG_8630tamasugi kosugi.jpg ◎樹種/スギ(スギ科)
◎樹齢/約1500年 
◎樹高/40メートル
◎幹周り/10.91メートル
◎所在地/山形県鶴岡市山五十川字臼井266
 国指定天然記念物(2014年6月現在)

津金沢の大杉 Cedar in Yamagata

抱きつくとビリビリと
強烈な気が伝わってきた

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◎樹種/スギ(スギ科)
◎樹齢/1000年 
◎樹高/38.5メートル
◎幹周り/9.18メートル
◎所在地/山形県山形市南部の津金沢集落 熊野神社
 山形県指定天然記念物(2014年6月現在)

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