【つばきもん】 tsubaki-mon-墨絵手描き
椿には女の魂が宿っている......。椿の帯を締めるたび、「女であること」を意識します。富山県氷見市に立つ藪椿(老谷のツバキ)の伝説に登場する女性の夫への愛を思い出すからです。この「つばきもん」は墨絵のような描写で、姿をそのまま写し取ったもの。ひっそりと、時に、樹冠いっぱいに真紅の花をつける椿のひと枝を描いたものでしょうか。花の絵に色はありませんが、地色が花びらの赤を思わせます。結びやすいちりめん地の名古屋帯です。
◎きものの思い出
今年こそ、きもの生活を復活しようと、2017年の初詣、着ていきました。その始まりに選んだのが椿の赤い帯でした。母から譲り受けたものです。若い頃にこの白の大島紬に合わせて誂えたそうです。帯の椿に色はないけれど、地色の赤がこっくりと、氷見の藪椿を思わせます。帯揚げは白の絞り、小さな緑が散っています。その緑を「春の芽吹き」に見立て、帯揚げは「清めの水」を意識して縹色(はなだいろ シックな青色)。このお正月、母と一緒に、着物のコーディネートをいろいろしてみました。色の組み合わせで早春の草花をイメージさせたり、同じ着物と帯を帯締め一本で粋に、はんなりに...。「日本女性に生まれてよかった」と心から思う、幸せなひとときです。月に何度も着物を着ていた(雨が降っても着てた頃が懐かしい)、そんな生活は今の私には難しいけれど、時には着物でお出かけしようと決めたお正月でした。
書いた日:2017年1月29日(日)
つばき 椿 camellia ―ご縁を結ぶ花
◎樹種:ツバキ(ツバキ科)常緑高木
◎学名:Camellia japonica
◎シンボル:縁結び、不老不死、邪気祓い
ツバキを身にまとうことは邪気邪念から身を守ること。そして、生涯をともにする伴侶を導く木。夫婦の絆を強くしてくれる花。出雲、八重垣(やえがき)神社の「玉椿」、2本の幹が1本に融合する連理の「夫婦椿」......日本には神秘的な姿をした、縁結びのツバキが数多くあります。
シャネルの白いツバキ、カメリア。デュマの小説『椿姫』の主人公マルグリットは飾らない、真実の愛を知りました。西欧の女性たちも魅了したツバキですが、わが国の自生の花木。血のしたたるような真っ赤な藪椿を代表として、女心を熱くする色香漂うツバキです。
白の大島紬に、ツバキ文様の赤い名古屋帯を締めました。