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命主社のムクノキ Aphananthe in Izumo

縁結びの神様、出雲大社のご神木
すてきな出会いが次々と起こります



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s-izumo matsuri CIMG1182.jpg DATA of TREE
▽樹種:ムクノキ(アサ科・落葉高木)
▽学名:Aphananthe aspera 
▽樹齢:約1000年
▽樹高:約17m/幹周り:約12m
▽所在地:所在地/島根県出雲市大社町杵築東 命主社(いぬちぬしのやしろ)




出雲に向かう時はいつも、出会いの不思議を考えます。私の人生をよいほうに導く人とのご縁は、出雲大社から帰ったあと、次々に起こることが多いからです。松が立ち並ぶ参道を歩きながら考えたことや、本殿で手を合わせて願ったことなどが叶うように、必要な人がぽっと現れる・・・。もちろん誰かと出会ったからといって、突然、人生が変わることはないけれど、ご縁が結ばれた人たちの言葉に背中を押されて、ひょいっと行動したことがやがて、大きな転機へと進んでいったことはとても多いのです。

何か大きな存在が、ここを訪れる人と、誰かとを引きつける力が、出雲の大地には満ち満ちているのでしょう。この大きなムクノキもまた、出雲の<ご縁>の力を具現化しているように思います。
出雲大社の摂社「命主社」のご神木。

初めて、お正月に出雲を訪れた時は見つけることができませんでした。とてもわかりづらい場所にあるのです。翌年、今年こそはと気合いを入れて向かい、民家の間の小道を抜けたところに突然、どっしりとそびえる大樹が現れたときには感動しました。

【木の特徴】
堂々たる姿を見よ!樹皮の生々しさを見よ!ダイナミックな生命力を感じよ!
とにかく背が高く、カメラにおさまりきらない。幹にはごつごつしたコブがいくつもあり、人間の歴史などおかまいなしに成長してきた力強さがありました。根は土からむき出しで、片足は大地へとずいずいっと伸ばし、もう片足は歩き出さんばかりにシコをふんでいる。なぜか岩を抱えこんで立ち上がっています。もしかすると、かつては、このあたりを歩き回っていたのではないかと思わせるほどの異形の立ち姿をしていました。古来、大樹には神が降りるという、まさに神の依代。社殿に祀られるのは「神皇産霊神(かみむすびのかみ)」という女神さまです。一千年の昔、ここに芽生えたのは、この神皇産霊神さまの依代となる使命ゆえではなかったでしょうか。

小さな社の前に聳え立つムクノキのご神木。しばらく座って眺めていたら、1時間も経ってしまっていました。それでも、どうにも立ち去りがたく、帰りかけては振り返り、再び見上げていると、地元に住む人らしいおばあさんが声をかけてきてくれました。「旅の人?」「もっとムクノキについて知りたい」と言うと、その方はこの辺り、真名井(まない)で解説ボランティアをしていたと、いろいろと説明してくださいました。そして、神皇産霊神様のお参りの言葉も教えてくださって、一緒に唱えました。

「幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)護(まも)りたまえ 幸(さいわ)いたまえ」と3回唱えるのですよ、と。

思いがけない、心優しい気持ちになったひととき。出雲は本当に、縁結びの神様と出会える場所だと思います。無理やり、誰かとご縁をつなごうとしなくても、神さまはこうやって、素敵な人との出会いを導いてくれるのでしょうね。

★この木を見るポイント
⇒幹にはごつごつとした隆起があり、コブがあり、うねりがある。今、この瞬間にも命が細胞を動かし、さらなる大樹へと成長しようとしている。

【ムクノキの教え】ご縁がご縁を呼ぶ

【歴史を伝える】
命主社は出雲大社の摂社です。「ご神木が先か、神社が先か?」そう、問われると、この神社は確実に、ムクノキが始まりのように思えます。はるか昔から、ムクノキはここに立っていて、この地で生きる人々が木に手を合わせて、崇拝をするうちに、お供え場所ができ、やがて、小さな社殿が立てられ、徐々に神社と呼ばれるようになったのではないでしょうか。毎朝、お供えをする人もいたでしょうし、思いがけず、お願いごとがかなう人もいたでしょう。この地域で生きる人々の幸せと健康を、一千年にわたって見守り続けてきた、ご神木です。ムクノキの向こうには、小さな祠が見えます。ご祭神は「神皇産霊命」。出雲大社のご祭神「大国主命(おおくにぬしのみこと)」をさまざまな危機から守り、国造りを助けました。社殿が大きな岩の前に建てられていることから、古代の磐座(いわくら)が神社の始まりともいわれています。(諸説あり)

【命主社―神皇産霊神のご神殿】
命主社の正式名称は、「神魂伊能知奴志神社(かみむすびいのちぬしのやしろ)」である。社(やしろ)の前にある立板にはこのように書かれてある。

「神皇産霊神は天地万物の根本となられ、大國主大神(おおくにぬしのみこと)が危難に遭われた際には常にお護(まも)りされ、国造りの大業を助成せられた神です。元旦の朝には出雲大社の大御祭に引き続き、国造り以下浸食参向の許、厳かに祭典が斎行されます。祭日 一月一日 十一月七日」

祭神の神皇産霊神は高天原に降り立ち、天地万物をお造りになった三柱の神様の一人。二柱は天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、高皇産霊神(たかみむすびのかみ)。日本神話では、この女性の神様「神皇産霊神」は大國主大神が兄神たちに謀(はか)られて殺されたときに蘇生させた神とされる。『古事記』では少名毘古那神(すくなひこなのかみ)の母で、ともに国を造るようにと命じた。「産霊(うぶすな)」とは「生成」を意味し、高皇産霊神と対となって、「創造」をシンボライズし、男女の「縁結び」を司る神である。地元では子どもを守ってくれる神様としても知られ、百日詣でといって、子どもが生まれて百日目になると、健康で幸せな子に育つようにと親子そろってお参りして、お願いするという。

【この木に会いに行こう!】
出雲大社境内から徒歩約5分。 このムクノキ、出雲大社から約5分と近いのですが、少々わかりづらい場所にあるので、見逃さないようにご用心。本殿を背にして、鳥居をくぐり左方向へ。社務所とは反対側に歩いていくと石橋があり、苔むした川を左手に見ながら、まっすぐ進みましょう。民家が続き、本当に会えるのかと不安になりますが、そのまま歩き続けて、看板が見えたら、もう安心。矢印に従って、細い小道を進むと、突然、大きな大きなムクノキが出迎えてくれます。

なぜ、これほど事細かに行き方を説明するかというと、私、初めて「命主社のムクノキ」を訪れたとき、会えなかったから・・・。引き返して、出雲大社の境内で、神主さんに聞いても、「ムクノキなんて知らない」と言われ、泣く泣く出雲をのちにした苦い経験があるのです。悔しいので、翌年再び訪ね、やっと出会うことができました。そして、何年ぶりかしら、再び会いに来ました。今回は、大勢の友だちと一緒に。推定樹齢約1000年。前に会ったのはお正月、冬の寒い時期だったからか、現在のほうがずっと元気に見えました。生き生きとして、青空に向かって、天高くそびえていました。

(2010年7月撮影)

八重垣神社の玉椿 Camellia in Shimane 

まんまるい樹冠の良縁ツバキ 
大切なあの人と"赤い糸"を結びます  

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DATA of TREE
▽樹種:ツバキ(ツバキ科・常緑高木)
▽学名:Camellia japonica 
▽樹齢:約400年
▽樹高:約8m/幹周り:約1.6m
▽所在地:島根県松江市佐草町227
▽花の見頃:3月下旬~4月上旬

出雲大社からバスで約20分のところに、男女のご縁を結んでくださる八重垣(やえがき)神社があります。境内には縁結びを象徴する形「連理(れんり)」のツバキがたくさん立っています。「連理」とは2本の木が途中から1本になって成長する木の姿のこと。その始まりの木が神社の正面に立っている「玉椿(たまつばき)」です。

【木の特徴】
日本の"結婚"の聖地、八重垣神社。八岐大蛇を退治した素盞嗚尊(スサノヲノミコト)が稲田姫命(イナダヒメノミコト)と、日本で初めて"結婚"という形を結び、男女の<縁結び>の道を開かれたことが始まりの神社です。2人が結婚したとき、大地に立てた2本のツバキが芽を吹き出し、一心同体の形に成長していきました。「玉椿」と呼ばれて親しまれ、立て看板には「神秘の夫婦椿」。太い幹が2本、寄り添うように癒着して、ふくよかなお尻のようなシルエットで1本になり、上へと伸びていっています。樹冠はまんまるで、ふくふくと笑い合う、仲良しの夫婦みたい・・・。「夫婦円満」「幸せな家庭」を象徴するような形です。こんな歌が案内板に書かれていました。

「出雲八重垣、祈願をこめて、末は連理の玉椿」

神話の時代から現代まで、「愛」の象徴として崇拝されているツバキ。木肌はさらさらとして肌触りがよく、葉はツヤツヤとして美しい。女性の魅力を高め、美しさにもご利益があるといわれるツバキです。あの資生堂の花椿マークになったのはこの木だそう。私が訪れたお正月、ツバキの花はまだ咲いていませんでしたが、まあるい樹冠、ふっくらした幹を眺めているだけでもホッと心があたたかくなるような幸福感に包まれました。

★この木を見るポイント⇒ 2本の幹が途中でくっついて1本になり、一心同体で成長している。まるい樹冠も可愛い。

【歴史を伝える】
八重垣神社の境内にも連理のツバキがあります。不思議なことに、木が枯れても、境内のどこかでまた連理のツバキが芽を出すと伝えられ、現在は3本の夫婦椿があるといわれています。お土産には八重垣神社のお守りの一つ「縁結びの糸」を。赤い糸と白い糸とが入っていて、男女のご縁を深く結んでくれますよ。

【ツバキの教え】
ひとつご縁を結べば、幸せがひとつ訪れる。ふたつご縁を結べば、幸せがふたつ訪れる。1本のツバキはあなたです。ご縁に気づかないままにすれ違ってしまう友がいないように、愛の結び人になりなさい。

【この木に会いに行こう!】
JR「松江市」駅から、八重垣神社行きのバスで約25分、終点下車すぐ。出雲大社から向かうなら一畑電鉄「電鉄出雲市」駅からバスで約20分。

(2008年撮影)

八重垣神社の夫婦椿 Camellia in Shimane 

2本が1本でつながって、一心同体でのびていく
運命の人を導く、連理のツバキ

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DATA of TREE
▽樹種:ツバキ(ツバキ科・常緑高木)
▽学名:Camellia japonica 
▽樹齢:不明
▽樹高:不明
▽所在地:島根県松江市佐草町227 八重垣神社
▽花の見頃:3月下旬~4月上旬

【木の特徴】
別々の場所で生きていた男と女とが引き寄せられるように出会い、結ばれる......。その神秘を象徴するツバキが出雲にあります。「夫婦椿」「子宝椿」とも呼ばれる連理のツバキです。別々に芽を出し、成長した二本の幹が途中でくっついて一本になる神秘的なツバキ。八重垣神社の鳥居をくぐってすぐのところに立っています。樹皮がほんのりとピンク色をして、嬉しくて頬を染めたみたいで幸せそうです。
★この木を見るポイント⇒ 2本の幹が途中でくっついて、1本になって伸びていく。

【歴史を伝える】
この神社は八岐大蛇を退治したスサノオノミコトが稲田姫命と日本で初めて〝結婚〟という形を結んだことが始まり。境内のあちこちに、男女和合を象徴するような木の幹、樹皮の形、洞穴などがあります。そのそばには千羽鶴やお菓子のお供え、お賽銭があり、願いをかけた人々の思いが伝わってくるようです。

【ツバキの教え】
無理やり繋がろうと思わなくてもいい。ご縁があれば、時が経っても、人は結び合うものだから。

【この木に会いに行こう!】
JR「松江市」駅から、八重垣神社行きのバスで約25分、終点下車すぐ。出雲大社から向かうなら一畑電鉄「電鉄出雲市」駅からバスで約20分。

(2010年撮影)

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