うさぎの神社のもののけ欅 Zelkova in Saitama
ツキを呼び寄せる
ケヤキとうさぎ
うさぎの神社といわれる調(つき)神社には可愛い顔をした欅がたくさんあります。
最初に出迎えてくれるのは、狛兎のすぐそばに立つコブつき欅。そのコブはまるで小さなクマかコアラのような姿をして、幹にぴたっと抱きついています。母なる大樹に寄り添い、安心しきっているようなコブを手のひらでそっと包むと、温かくなってくるから不思議です。
本殿へと向かう参道に立つ欅は、洞穴の上あたりに丸い顔のようなコブがくっついて、まさにもののけといった愛らしい姿。思わず、「こんにちは」と声をかけてしまいました。
調神社の「ツキ」は「月」。生命誕生の神秘に月が関わるように、月の母性エネルギーに満ちあふれる神社だから、ここの欅はあどけない顔をしているのでしょうか。〝ツキはツキを呼ぶ〟ともいわれ、この神社に来れば何事もツイてくると頼りにされています。
境内を歩けばうさぎ尽くしで楽しくなります。うさぎの口から出る幸運・開運の霊水、池にもうさぎ、お守りもうさぎ。月とうさぎとのおめでたい組合せでツキを呼び寄せる欅です。
◎樹種/ケヤキ(ニレ科)
◎樹齢/数百年
◎樹高/約25m
◎幹周り/約5.7m
◎所在地/さいたま市浦和区岸町3-17-25
(2009年5月現在)
上野総社神社のケヤキ Zelkova in Gunma
時に、木は奇跡を見せてくれます
光降り注ぐケヤキのように
大きな木のトンネル、といった姿に惹かれて偶然入った神社で出会いました。雷が落ちて幹の中心が焼け、樹皮だけで立っていて、まるで鳥居のような形をしています。一時はもう再生は難しいと心配されましたが、春になれば再び芽吹き、見事に復活して堂々たる命の気を放っています。深い洞穴を覗きこむと何処か、内に秘めていた未来へと誘われそうな森厳さを感じます。忘れがたい木とはこうして、強引に呼び寄せられたように出会うことのほうがはるかに多いように思います。
境内の中心には、すらりと背の高いケヤキのご神木が立っていました。周りをぐるりと囲むように十二支の絵馬が掛けられていて、幸せを願う人々の思いがこのケヤキを支えているように思えます。しばらく眺めていると、太陽の色が少しずつ変わり始め、ケヤキを美しい光が包んでいきました。枝々の間からいっせいに降り注ぐ光の束は、天上から神が降り立ち、円を描きながら舞っているかのようです。一緒に訪れた友人たちとともに、その神秘的な情景をただただ見つめていました。木は時に、こんなすばらしい贈り物をくれるのですね。
◎樹種/ケヤキ(ニレ科)
◎樹齢/約300年以上
◎樹高/約26m
◎幹周り/約6.2m
◎所在地/群馬県前橋市元総社町1-31-45 上野総社神社
(2011年8月)
大國魂神社の欅 Zelkova in Tokyo
幸せがいっぱい入る
福袋みたいなケヤキ
ケヤキ神社と呼びたいほど、すばらしいケヤキと数多く出会えるのが大國魂神社(おおくにたま・じんじゃ)です。ご神木は背が高く太く、ダイナミックで勇ましい姿が多いのが特徴です。圧巻は参道に連なるケヤキ並木。約150本のケヤキが南北500メートルにわたって立っています。ケヤキ並木の歴史は古く、源頼義・義家父子が前九年の役(1051~1062)の戦勝記念にケヤキの苗千本を奉植したのがきっかけとされています。現在のケヤキ並木の様子は徳川家康が二筋の馬場を寄進し、ケヤキの苗を植えたことから始まりました。休日ゆっくりと、大切な人と散歩したい通りです。
パワーが強いのは「ご神木」と名のつくケヤキばかりではありません。境内の裏手で偶然見つけた、根元に大きなコブがあるケヤキ。1メートルくらいの高さまでぷっくりふくらんで、まるで福袋を抱えたようなおめでたい大樹です。ひと目で気に入って、福袋に両手で抱きつき、欲しいものを次々思い浮かべました。ちょっとわかりづらい場所にありますが、願い事がたくさんある人はぜひ探してみてください。
◎樹種/ケヤキ(ニレ科)
◎樹齢/不明
◎樹高/不明
◎幹周り/不明
◎所在地/東京都府中市宮町3―1 大國魂神社内(妙光寺の裏手から本殿に向かう途中にある)
(2010年5月現在)