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カッパドキアの目玉の木 Nazar Tree in Cappadocia

鳩の谷に立つ邪眼除けの木
I met the tree of Nazar Boncugu

CIMG2611カッパドキア サブ (2)_R.jpg ▼生命の樹:ナザールの木(トルコ・カッパドキア)
▼Tree of Life in Cappadocia(Türkiye)
▼シンボル:邪眼除け、魔除け

世界遺産のカッパドキアの岩石遺跡群。キノコ岩やとんがり帽子形の岩が連なる、なんとも不思議な風景が広がる。そのひとつ、ウチヒサールにある「鳩の谷」に立っていたのがこの目玉の木だ。トルコ人なら誰でも持っている、ガラス製の美しいブルーの目玉のお守り。邪眼除けの護符ナザール・ボンジュウNazar Boncuguが枝という枝にぶら下がっていたのである。トルコでは、邪眼(じゃがん)、邪視(じゃし)といって、悪意ある視線でにらまれると不運や病気が身に降りかかるとされ、ナザール・ボンジュウはそれを防ぐお守り。とくにトルコで怖がられているのが嫉妬の感情だ。嫉妬、ねたみ、そねみでいっぱいの視線を浴びると災いが起きると信じられ、このお守りを持っていると、悪意の目をはねつけ、不運を打ち砕き、身を守ることができると考えられている。観光バスの運転手も窓やハンドル、運転席のいたるところにこのお守りをつけていた。

目玉の木が立つ「鳩の谷」は、同じ地球とは思えない風景に圧倒される。ちょうど正面には、奇岩にいくつもの穴があいた住居跡があり、本当にこんなところに人が住んでいたのだろうかと不思議でならなくなる。その穴ではかつて伝書鳩を育てられたことから、谷の名前がついたという。谷を見下ろすように立つ、ナザール・ボンジュウ!目玉いっぱいの木。枝に何かをぶら下げることは、古来、「生命の樹」に願いをかけることだ。美しいブルーの目玉によって、その場所が邪眼除けの空間に仕上げられているのだろう。カッパドキアの別の場所とは全く違う、神聖な雰囲気があり、それでいて素朴な、清められた気に満ちているように感じた。ナザール売りのお兄さんも商売っ気もあまりないし、また訪れて、ゆっくり過ごしたい静かな、静かな場所である。

DATA of TREE
◎樹齢:不明
◎樹高:不明
◎幹周り:不明
◎所在地:カッパドキア、ウチヒサール「鳩の谷」  
◎この木に会いに行くには:「鳩の谷」の頂上にある。Pigeon Valley of Cappadocia(Türkiye Cumhuriyeti)(2009年10月撮影) 

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神が宿っているガジュマルの木 Banyan in Bali

バリ島のガジュマルは日本のご神木のよう
神と慕う人々の思いが伝わってきます

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 今から15年以上前、バリ島を訪れた時、ガジュマルの木の前で不思議なヴィジョンに包まれました。
......シダや苔が覆う原始の森。苔むした緑の匂いがあふれる森を流れる川。どこかからか、一本の根が伸びています。根は私のへその緒とつながり、川はその根を通って体の中へと流れてきます。川の水は私の血液? 肉体と大自然とが溶け合うような感覚......。やがて私は地球という洋水の中でたゆたう存在となり、体を丸めてすやすやと眠っていました。その瞬間気づきました。「私の命は脈々と、原始の昔からつながってきたのだ、私は命を伝えていく使命がある」と。
 この神秘的なビジョンは、神宿るガジュマルが教えてくれた奇跡だと今でも思っています。本当はもっともっと不思議な体験があるのだけど、それはいつか、どこかでお話ししましょう。
   その後、バリ島を旅した時、神として祀られているガジュマルと数多く出会いました。バリ・ヒンドゥ教の総本山、ブサキ寺院に向かう坂道には石造りの神殿があり、小さな祠の前に樹冠を広げて立っていました。訪れた時はちょうどお祭りで、華やかな飾りつけがしてありました。街中でも祠のあるガジュマルをあちこちで見かけました。木の幹に格子柄の布が巻いてあるガジュマルも神様の木の証拠です。
 クタのレストランで出会ったガジュマルは石の門に囲われ、お供え物、灯明のためのスタンドが置いてありました。その姿は日本の神社に立つご神木そのもの。嬉しくなり、木の前で写真を撮っていると、ガイドさんが飛んできて、「この木は神さまの木だから、気安くそばに行ってはいけません!」と言われてしまいました。撮った写真を見ると、不思議な幻影が......。私は急に怖くなり、木の神様への礼儀を忘れてしまったことを深く反省しました。
 "木に神が宿っている"思想は遠いバリ島でも根づいています。バリを旅したときは、ガジュマルに手を合わせてみてはいかがでしょうか。

★この木と出会うには
◎ブサキ寺院
  Pura Besakih Jalan Raya BesakihRendang 80871 Indonesia
◎レストラン「マ ジョリMa Joly」
クプクプバロン・ビーチ・リゾート内 Jl. Wana Segara Tuban, Bali(バリ島・クタ)
http://www.ma-joly.com/discover.html
(2011年6月現在)

画家ルノワールを支えたオリーブ(Olive in France)

愛するオリーブの絵だけが飾られた
小さな部屋があるのをご存知ですか?

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olive3.jpg画家ルノワールが心の支えにしたオリーブがあると知り、どうしても会いたくなって旅立った南仏への旅でした。「樹木が人の魂を救う」ことを多くの人に伝え、書き続けたい私にとって、このオリーブは人間と樹木とが心通い合わせ、お互いに生きる力となる象徴の大樹です。
晩年の十二年を過ごした家が現在は美術館になっています。門を入ると、銀緑色の葉が風に揺れるオリーブ、すぐそばには目の覚めるようなイエローのミモザ、少し歩くとリンゴの木がありました。
そして、ルノワールが愛したオリーブの木は樹齢五百年。
大地にどっしりと根を張り、異形の姿を見せていました。日本でこれほど大きなオリーブを見たことはありませんでした。
歳をとって絵筆が持てなくなったルノワールは、小高い丘の上に立つ一本のオリーブをひと目見て気に入り、この地に移り住みました。そして、彼はリウマチで痛む右手に絵筆を紐でぐるぐると巻きつけ、車椅子で絵を描き続けました。毎日、毎日、亡くなる日まで......。
二階に上がると、オリーブの絵だけが飾られた小さな部屋があります。デッサンもあれば水彩画もあり、細密な鉛筆画、油絵もありました。何よりも感動したのは、窓から庭を覗くと、ちょうど絵と同じ風景が広がっていたことです。オリーブが立つ場所も、風が吹きぬける通りも、空の広がりも......。一瞬、この窓辺にルノワールが座って絵を書いているような、私は画家のそばに立っているような錯覚に陥ったほどです。
西欧では古来、オリーブは"再生の木"として、神聖視されています。絵を描き続けたいルノワールの願いにこたえ、オリーブは彼の心を支え、生きる勇気を与え続けたのでしょう。オリーブは今もなお、丘の上に立っています。

★この木と出会うには
Musée Renoir(ルノワール美術館)
06800 CAGNES-SUR-MER (FRANCE)
南仏ニース駅から約15分のカーニュ・シュル・メール駅下車、徒歩約20分。ルノワール美術館の庭園内
(2005年現在)

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