【さくらもん】sakura-mon
四月、満開の桜そのものを絵にしたような文様です。
桜文をまとうと、どうしてこんなにも心が華やぐのだろうかといつも思います。
ぷっくりとした可憐なつぼみから、枝いっぱいに花開いていく大胆さ、やがてはらはらと散り落ちていく哀れさ......。あまりにも早い花の移り変わりが女の体を湧き立たせるのでしょうか。桜が咲く少し前、裸の木々の間に立った時ふっと、ひと足早く桜が咲いたような錯覚をもたらしてくれるようです。
◎きものの思い出
写真は、京都・祇園の友禅作家、齊藤富蔵さんに誂えていただいた名古屋帯の桜です。桜のそばには春の柳が描かれています。その下側には菊と秋の柳。あまりに美しい桜の帯にうっとりしながら、「桜の季節だけしかしめられないのは悲しいです」と伝えると、「桜は日本の花ですから、一年中しめてもいいんですよ」と。京都で七十年、着物を作り続けている齊藤さんのお墨付きをいただいたようで、それ以来、お正月も春の初めも、秋も冬も活躍しています。