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大船渡の三陸大王杉 cedar in Iwate

人々を勇気づけた大きな杉の木  
瓦礫の山を見下ろすように立っていた 


 三陸大王杉1IMG_4141.jpg三陸大王杉2IMG_4166.jpg



















DATA of TREE
▽樹種/スギ(スギ科)
▽樹齢/約7000年(伝承)
▽樹高/約20m
▽幹周り/約13.75m
▽所在地/岩手県大船渡市三陸町御喜来字杉下 八幡神社境内
※市指定天然記念物(1978年指定) 

2011年3月11日、東日本大震災を生きのびた木をご紹介します。

【木の特徴】
大震災から約半年、9月に撮影した大王杉の姿です。樹齢約7000年とも伝わるこの木はとにかく大きい。こんもりと繁る樹冠、みずみずしい緑、どっしりとした太い幹。「大王」の名にふさわしく、御喜来(おきらい)漁港を見下ろす高台にそびえています。大震災の日、このスギの手前まで津波が押し寄せたと伝わります。私が訪れたときはまだ、海岸沿いを見下ろすとガレキが山積みでした。人の姿はなく、ガレキを片付ける重機の音だけが響いていました。下から大王杉を見上げれば、鎮守の森からにょっきりと顔を出し、杉にしては珍しい、まんまるい樹冠が緑いっぱいに広がって、地元の人を元気づけていました。地名の「杉下」はまさに、このスギの下、という意味でつけられたそうです。少し急な細い坂道と階段を登りきったところに大王杉は立っていますよ。(2011年9月24日撮影)
★この木を見るポイント⇒ とにかく大きいこと。

【歴史を伝える】
東日本大震災から約10年。多くの人があの日の悲しみを背負い、大切な人への思いを胸に生きていらっしゃることと思います。自然の恐ろしさを知った日々。津波をかぶって今なお立ち続ける木があります。木の直前まで津波が押し寄せ、建物の倒壊を防いだ木もあります。この大きなスギは東北の人々の生きる力となった木のひとつです。写真右下の眼下に見える細長い木は、津波をかぶっても生きのびたポプラの木。こちらも「ド根性ポプラ」と名づけられて、地元の人たちに愛されています。人間よりも遥かに長い歳月を生きる木は、3.11の記憶を伝える生き証人であり続けると思います。

【この木に会いに行こう!】
三陸鉄道「三陸」駅下車、徒歩約10分。大王杉がある場所までは階段をかなり上ります。
 
【スギの教え】
今、微笑むことができることに感謝する。


三陸大王杉4IMG_4121.jpg三陸大王杉3IMG_4107.jpg


華蔵寺の宝珠松 Pine in Iwate

宝珠が連なる
富と豊穣の松かさ

s-IMG_402pine houju.jpg 一つの枝に松かさ(毬果)が数十個ひとかたまりでつくことから、〝宝珠〟が連なる松という名前がつきました。雄花と雌花のつく位置が一般のマツとは反対に着生する突然変異で、学術的にも貴重な松とされています。毎年すべての枝に発生するとは限らず、残念ながら訪れた時にはついていませんでした。
古来、松かさは富、子宝、豊穣のシンボル。表には現れなくても心身の豊かさをもたらす力を秘めています。華蔵寺は震災発生当時、避難所となっていました。空を目指して凛と立つマツの姿は、誇りをもって再び生きようとする人々の希望となっただろうと思います。

◎樹種/マツ(マツ科)
◎樹齢/約130年
◎樹高/約20m
◎幹周り/約2m
◎所在地/岩手県陸前高田市小友町字門前
(2011年9月現在)

大船渡市の三面椿  Camellia in Iwate 

1400年の時を生きる
希望のツバキ

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 一千年を越えてこの地に立ち、海に向かって枝を伸ばすヤブツバキ。日本最古のツバキともいわれています。神社創建の頃、東、西、南の三方向に植えられていたことから「三面椿」の名前があります。現在は東側のツバキだけが残っているそうです。四月、樹冠いっぱいに花が咲き乱れ、真っ赤に染まるほど。命が叫ぶかのような激しい赤、赤、赤。
 2011年3月11日、このツバキの前まで津波が押し寄せたといいます。震災後は避難所となっていた熊野神社。私が訪れた日、境内では小さな女の子が二人遊んでいました。お姉ちゃんと妹。無邪気に追いかけっこをする様子をおじいさんが微笑みながら見守っていました。「写真を撮ってやってくれないか」と頼まれたのでカメラを向けると、ちっちゃな妹のほうは恥ずかしがって逃げてしまいました。お姉ちゃんのほうはツバキの前にちょこんと座って撮らせてくれました。とってもかわいい女の子でした。こんなところまで津波が?と思うほど高台に立つ熊野神社で、今、生きている人たちが笑っている。写真を送りますというと、「いらないよ。写真に撮ってくれたというだけでうれしいんだから。気にせんでくれ」とおじいさんは答えました。いつか渡せたら...と思っているのだけれど。
 今年も、何事もなかったように咲いた真っ赤なツバキは、この土地に生きる人々の<いのち>の灯のように思えてきます。これからも人々の生きる希望であり続けるのではないでしょうか。

◎樹種/ツバキ(ツバキ科)
◎樹齢/約1400年
◎樹高/約10m
◎幹周り/約8m
◎所在地/岩手県大船戸市末崎町字中森 熊野神社内
(2011年9月現在)

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