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熱田神宮のクスノキ Camphor in Aichi

白蛇が棲むクス、大地の気あふれるクス  
刀剣の神様が守る神社で会いたい「七本楠」 


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DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(ケヤキ科・落葉高木)
▽学名:Cinnamomum camphora
▽樹齢:約1000年(本殿のそば)
▽樹高:約20.5m/幹周り:約7.7m
▽所在地:愛知県名古屋市熱田1-1-1
 

熱田神宮のご神体は、三種の神器の1つ「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」です。刀剣の神様がいらっしゃる神社にはどれほどの力強い気を感じるだろうか、、、と思っていましたが、境内はとても静かで清らかで、穏やかな空気が流れていました。さあ、「熱田神宮の七本楠」はどこにある? 鎮守の森を散策しながら探してみましょう。

【木の特徴】
境内をのんびり歩いているうちに本殿についてしまった。あれ、クスノキは? 見渡すと本殿の鳥居のそば、柵の中に立っていました。樹齢千年という大樹なのに、気づかなかった・・・。そう、私はとても有名なご神木を素通りしてしまうことがよくあります。このクスノキには白い大蛇が棲むというので、木の根元には卵が供えられていて、この地で大切にされているとわかる一樹でした。あらためて手を合わせます。

大きな木と初めて会うとき、こんなふうにスッと通りすぎることが多々ありますが、千年も生きた木と出会ってすぐに心通わせようと思うほうが人間の驕りだと思うようになりました。数年経って、二度目にお参りしたときはちゃんと出迎えてくださいました。クスノキさんときちんと正面を向き合って、ご挨拶できたように思います。(写真上①)

境内に立つ「七本楠」をすべて見たいと思い、神主さんに聞くと、社殿の後方にすばらしいクスノキがたくさんあるとのこと。清水舎へと向かう「こころの小径」を歩いていくと右手、鬱蒼とした鎮守の森の中、私は出会ってしまった。運命の木に。苔むして、荒々しい気を放つクスノキ(写真下②)。大地の奥底にはびこる根から生命エネルギーを放出し、幹を通して上昇していく。太い幹は右に曲がり、左に曲がり、樹冠は枝を縦横に広げて空を覆う。本殿そばのクスノキの静けさとは正反対の力強いパワーがビシビシ飛んできます。この野性の力こそ、私がご神木に求める神聖なエネルギーだ・・・。目を閉じて、時間の流れを気にすることなく、木の放つ気を感じていると、心と体がスーッと鎮まっていくよう。と、同時に、大地に根を張って立つ、大きな木と一体化するような感覚。それは、人生という大地にどっしりと立ち、自分を信じて生き抜く力で心身が満たされていくようでもありました。

★この木を見るポイント⇒ ①本殿そばのクスノキは枝の間に小さな祠(ほこら)がある、白い蛇と会えたらラッキー。②社殿裏手のクスノキは苔むして、野性の荒々しいパワーを感じてください。

【歴史を伝える】
熱田神宮の創祀は、草薙神剣の御鎮座に始まります。御祭神は熱田大神(あつたのおおかみ)。相殿神(あいどのしん)の1人、素戔嗚尊(スサノオノミコト)は日本に自生する木々を誕生させた神様ですね。『日本書紀』にこんな話があります。

「スサノオノミコトがヒゲを抜いて日本中にまき散らすとスギになり、胸毛を抜いてちらすとヒノキになり、お尻の毛はマキノキ、眉毛はクスノキになった」。

つまり、熱田神宮の境内にはスサノオノミコトの眉毛がたくさん生えている!想像すると楽しくなりますね。境内には他にも注目したい不思議な木があり、花が咲いても実のならない「ならずの梅」、茶人の愛好する「太郎庵椿」、空海(弘法大師)が植えたとされる「大楠」など。ぜひ、探してみてください。

【クスノキの教え】
しっかりと人生の根を張りなさい、と木は教えています。ひょろひょろの根しか生えていないと、遠くへ枝を伸ばせませんし、ちょっとした風が吹いても倒れてしまいます。"あなた"という「木」の根は?自由に、どこまでも、自分の行きたい方へ進むために、大地をがっしりとつかんでください。堂々と立つあなたのもとには小さな動物たちが集まり、根元では美しい草花が育つでしょう。

【この木に会いに行こう!】
名鉄「神宮前」駅から徒歩約3分。①本殿の鳥居そばの柵の中。②社殿裏手、清水舎に向かうこころの小径沿い。

(2019年7月撮影)