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崇禅寺のアカマツ pine in Gunma

神様が降臨するための梯子を発見! 
生命の営みが繰り返されることへの感謝の念 

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DATA of TREE
▽樹齢:不明
▽樹高:不明
▽幹周り:不明
▽所在地:群馬県桐生市市川内町2-651 崇禅寺内
▽会いに行くには:JR両毛線「桐生」駅から車で約10分

松迎え、門松、松明......。神の依代として、日本の伝統行事に欠かせない、わ が国の吉祥樹の代表といえるマツ。庭園などではきれいに剪定され、下枝は伐 りとられていることが多いのでわかりにくいが、海岸などで自然のままの姿を しているマツの枝が下向きに伸びていることがある。その枝は天から神様が降 りてくるときの梯子(はしご)だと古来、伝えられてきたのをご存知だろうか。 私自身、書物では知っていたが、本物と会えるとは思ってもみなかった。

群馬県桐生市にある崇禅寺の本堂前に立つ、堂々たる神様の梯子である。青々 と繁るアカマツの幹から一本の枝が伸びている。自然と伸び始めた枝をお寺の 方が丁寧に整え、ここまで育てられたのだろう。枝が太く、地面までなだらか な傾斜で導かれ、神様がとんとんと歩いて渡るにも安心のように思える。
崇禅寺は鎌倉時代、元久2年(1205)から約800年の歴史がある寺だ。初代執権で ある北条時政が追放され、子の北条義時が政権を握った頃からの始まりという。 境内にはアカマツの老樹が立ち並び、「萬松山」と呼ばれるほどマツが多い。 このマツの向かいにも、背の高いアカマツが聳えていたが写真に納まりきらず、 お見せできないのが残念だ。真夏に訪れたので、見上げても太陽の陽射しが眩 しすぎて、上の緑までよく見ることができなかった。巨樹は赤い龍のようだっ た。龍が空を昇るかのようにやや傾斜して伸びていこうとしている。そのダイ ナミックな立ち姿そのものが"神の依代"としての存在感をアピールしている ようだった。崇禅寺ホームページを見ると、第二十一世ご住職、岩田真哉氏は 「松樹千年翠」という言葉とともに、古い葉が新しい葉に移り変わりながらも、 生命の息吹は常に変わることなく、千年の緑を保つマツについて伝えていらっ しゃる。
これこそが日本古来の常緑樹、マツへの信仰である。寒い冬の間も緑を湛え、 春になれば新しい芽を出し、生命の営みが繰り返されることへの感謝の念。マ ツは毎日を無事に暮らせるという平和の象徴であろう。
じつはここを訪れたのはマツが目的ではなかった。樹齢600年、日本一のイト ヒバに会いに来たのだった。アカマツの後ろに見えるのがイトヒバだ。このお 寺は木が大きく育つ磁場のようなものがあるのかもしれない。目的とは違う木 と出会い、離れがたくなるのはよくあることだ。このマツもそんな1本である。 どこにも書かれていない巨樹、ご神木との出会いを大切に伝えていきたい。
それにしても不思議な姿をしていた。赤い幹、龍のウロコのような樹皮、のた うつように曲がりくねった枝。訪れたのは8月初めのこと。生命力に満ち満ち たアカマツの熱と照りつける太陽の陽射し。広い境内を歩けば、真夏だという のにオレンジ色に染まった紅葉も見つけた。私は境内を流れる、熱い赤の生命 エネルギーにすっかりのぼせてお寺をあとにしたのだった。

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