下鴨神社の「連理の賢木」Cleyera in Kyoto
2本の木が途中でつながっている
ご縁とご縁とを結ぶ神の依代
DATA of TREE
▽樹種:ツバキ科・常緑小高木
▽学名:Cleyera japonica
▽樹齢:不明
▽樹高:不明/幹周り:不明
▽所在地:京都市左京区下鴨泉川町 下鴨神社 相生社
【世界遺産・下鴨神社のホームページはこちらhttps://www.shimogamo-jinja.or.jp/】
ご神木にはご縁を結ぶ力がある、と私は信じています。
天と地とをつなぐご神木の下に立ち、抱きしめて、目を閉じて......。遠く離れた大切な人に伝えたいメッセージを心に唱えてください。その木はきっと、あなたの思いを届けてくれると思います。なかなか会えない家族、友だちの健康と幸せを思いながら、大きな木に願いをたくす、そんな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
【木の特徴】
"良いご縁"を導いてくれるご神木には大きな特徴があります。「連理(れんり)」の木であることです。特徴は大きく2つ。
(1)別々の2本の木が途中からつながって、1本の幹となっている。
(2)1つの同じ根から2本の幹が出て、仲良く一緒に伸びている。
下鴨神社の「連理の賢木(れんりのさかき)」は(1)の特徴を持っています。糺の森(ただすのもり)を歩いて、本殿を背にして鳥居の右手、縁結びのご利益で有名な「相生社」に立つご神木です。別々に生えた2本のサカキが途中から、しっかりと結び合って、伸びているんです。まるで手をつないでいるみたいです。この不思議な形は、相生社のご神徳によって結ばれたと信じられていて、この木に祈願すると、良縁を呼ぶ・子授け・安産・家庭円満などのご加護があるといわれています。2本の幹を結ぶように鈴がつけられています。ここを訪れたら、ちりんちりんと鳴らしてみましょう。きっと、素敵なご縁を運んでくれるはずですよ。
★この木を見るポイント
⇒2本のサカキが途中からつながっている。縁結びのご神木、典型の形「連理」であること。
【サカキの教え】「遠く離れたときこそ、心はひとつに結ばれる」
【歴史を伝える】
このサカキ、老木になると、糺の森のどこかに子どものサカキが芽を出して、跡を継ぐと言い伝えられる"鴨の七不思議"のひとつ。現在のご神木は四代目だそう。
サカキとは「境木」とも書き、神域と人間界との境となる木です。神を迎える依代(よりしろ)としても存在するサカキがさらに"連理"の形をしているのだから、その霊力はかなりのものと信じていいでしょう。人生に必要なご縁をきっと引き合わせてくれますよ。
【この木に会いに行こう!】
京阪電鉄・出町柳駅から徒歩約12分。糺の森を歩いて下鴨神社へ。本殿を背にして鳥居の右手、「相生社」の前に立っています。(2010年撮影)
【糺の森を歩くしあわせ】
突然、思い立って新幹線に飛び乗り、京都に向かう。数年前、私にとって、京都は癒しと再生の場所でした。故郷の広島にいる母親と京都で待ち合わせて、二泊三日くらいの小旅行をするのも楽しみでした。コロナがもう少しおさまったら、また実現したいなあ。
京都を旅したとき、必ず行くのは下鴨神社、本堂へと向かう「糺の森」を歩くことがなによりの浄化の時間です。京阪電車の出町柳駅から歩いて橋を渡り、大通りから表参道に入ると砂利道となり、静かな森が広がります。アスファルトに慣れた足に砂利道の感触が心地よく、一足ごとにじゃっじゃっという音がして、耳で味わうのも楽しい、境内さんぽです。
そこはタダの森じゃない、下鴨神社のご神域。本殿までの長い表参道に心地いい木陰が広がり、木漏れ日がふりそそぎます。いつ訪れても静かに出迎えてくれる、清らかな森。小さな小川のほとりを歩いていると、さらさらという音も耳にやさしく、時々、水の粒子を含んだような風が吹いてきて、肌も心もうるおしてくれるよう......。
途中、幹だけとなったご神木も立っているので、お見逃しなく。静かな静かな森の一本道に突然、強いパワーを放つ神秘的な木です。幹には注連縄や紙垂(しで)があるので、きっと見つけられると思いますよ。(2022年2月執筆)
鞍馬山の義経スギ cedar in Kyoto
スギの森に覆われた鞍馬山に登ったら
天狗伝説とともに語られるご神木を目指して
DATA of TREE ▽樹齢:不明
▽樹高:不明
▽幹周り:不明
▽所在地:京都府京都市左京区鞍馬山 義経堂
▽会いに行くには:JR「貴船口」駅から西門に入り、鞍馬寺・奥の院魔王堂か ら徒歩約10分。義経堂の前に立っている。
京都、スギの森に覆われた鞍馬山で、ひときわ力強く天を目指す一本のスギ。 牛若丸(のちの源義経)が修行したと伝えられる地に堂々たる姿で立ち、義経 の御霊を守護する使命を全うしようとしているかのようだ。義経の師はカラス 天狗(鞍馬天狗)である。別名を僧正坊(そうじょうぼう)といい、その昔鞍 馬山の僧正が谷(そうじょうがだに)に住み、夜になると姿を現わして、剣術 を教えたと伝えられている。義経伝説についてはここで詳しくは書かないが、 兄・頼朝と対立し若くして死んだ後、義経の御霊は鞍馬山に戻り、護法魔王尊 の脇侍として仕えていると今も信じられ、義経堂に祀られている。小さな御堂 だが、そばに立つスギには並々ならぬパワーが感じられ、天狗が上のほうから 見下ろしているのではないか、と思わせるような霊気が漂っていた。
義経伝説とともに語られるスギの巨樹だが、古来、天狗とスギはご縁が深いら しい。鞍馬山には「魔王杉」と呼ばれるスギもあり、夜に天狗が腰かけるので 枝が光るという。残念ながら、私はこのスギを見つけることができなかった。 京都には「天狗杉」と名のつくスギも多いらしく、天狗が飛んで来て休むスギ があるというから、次の京旅行では探してみたい。
鞍馬山の杉のオブジェ Cedar in Kyoto
朽ちてゆく大樹の魂が
もののけのような姿を作り出すのでしょうか
霊力を感じる山......という印象が鞍馬山にはあります。凛として清浄な空気に満ち、魂が研ぎ澄まされていくような力強さを大地からも、杉の木立からも感じます。
とくに激しい気に打たれるのは山頂近くの木の根道。土が岩盤状で硬いため、根が大地の奥まで伸びず、むき出しのまま地上を這う山道が続くのです。〝鞍馬山は積極的に生き抜くための活力をご本尊からいただくための道場〟といわれるだけあって、歩く道にも厳しさを求められるのかもしれません。
根と根との間をぬって進むと大杉権現社です。樹齢一千年の杉が立っていますが、私の心に響いたのはオブジェのような杉の株。おそらく長く生きてきた大樹の命が終わって幹が折れ、大地に還る途中......。辺りは静けさが漂う広場、木に寄りかかり、木の力と一体となる瞑想時間を過ごしました。ここから山道を下ると貴船神社に到着します。力強い山の気に、徐々に潤いをおびた水の気が混ざってくる、自然の気が放つ変化を楽しむのもこの土地ならではの霊力です。
◎樹種/スギ(ヒノキ科)
◎樹齢/不明
◎樹高/不明
◎幹周り/不明
◎所在地/京都市左京区鞍馬本町1074 鞍馬山の大杉権現社内
(2011年8月現在)
青蓮院のクスノキ Camphor in Kyoto
大枝で夢をつかみとる
威風堂々たるクスノキ
十年以上会っていないのに心通い合い、信頼感を抱き続ける友人のような存在......。このクスノキはまさにそんな強烈な印象があります。八坂神社を出発して、円山公園を通り知恩院へ。そこから北へ少し歩いたところのお寺、青蓮院の前に立つ大樹です。
境内の様子はほとんど思い出せないのに、クスノキの姿はくっきりと焼きついています。根はうねるように伸び苔むして尚、大地をがっちりとつかみ、幹から出た大枝は何かをつかみとろうとするかのように広がっていく。威風堂々たる姿に自分を支えてくれる大らかさを感じます。出会ったのは8年以上も前。今、再び会うと、クスノキはどんな姿を見せてくれるでしょうか。
◎樹種/クスノキ(クスノキ科)
◎樹齢/不明
◎樹高/26.1m
◎幹周り/5.94m
◎所在地/京都市東山区粟田口三条坊町69-1
(2006年4月現在)
東林院の沙羅双樹 Sal in Kyoto
妖しく、美しい白い花
〝諸行無常の響き〟の象徴
かつて、京都・東林院の庭に樹齢約三百五十の沙羅双樹が立っていました。幹が途中から二股に分かれた大樹。今、この庭にあるのはその子供たちです。根元にも小さな木が育ち始めています。朝、白い花が咲き、夜、花のつけ根からそのまま、すとんと落ちる、「一日花」。梅雨の頃、苔むした庭いっぱいに首だけを並べたように落ちた花の姿は美しく、妖しい。まったりとした白い花びらは日本女性の秘めた色香を具現化しているように思えます。
沙羅双樹のシンボルは「無常」。『平家物語』にあるように〝諸行無常の響き〟の象徴として白い花が存在しています。お釈迦さまが亡くなった時、臥床の四隅にあり、いっせいに花咲いて、たちまち枯れて悲しんだと伝えられます。東アジアでは天空を飾る宝樹。
一分一秒を悔いなく生きることを教えてくれる花です。
◎樹種/ナツツバキ(ツバキ科)
◎樹齢/約350年
◎樹高/約15m
◎幹周り/約1.5m
◎所在地/京都市右京区花園妙心寺町59 東林院(毎年6月15日~末日「紗羅の花をめでる会」のみ公開)
(2011年8月現在)