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蛇喰jabamiの千本カツラ Katsura in Akita

不思議な葉音が聴こえてくる。
水の神の気配を感じたい


IMG_9163 (2)_R.jpg DATA of TREE
▽樹齢:約800年(秋田県指定天然記念物) 
▽樹高:30メートル
▽幹周り:17.6メートル
▽所在地:秋田県由利本庄市鳥海町栗沢
▽会いに行くには:由利高原鉄道矢島駅より車で約30分。

新緑の萌える匂い、苔むした森の匂い。大地から上へ上へと伸びる枝がからま るカツラのそばで、水が流れる音がする。チロチロ、サワサワ。木の根元に小 川があるが水量は少なく、そこからは何も聴こえない。まさか樹液が流れる音 が聴こえているわけではないだろう。大きなカツラの木の裏側へ回ってみたと きのことだった。カツラ特有のヒコバエのひと枝が腕を伸ばすように手を広げ、生き生きとした葉をいっぱいに私の方へと迫ってきた。カツラの葉はハート形をしていて一枚 一枚にまるで心があるかのように見える。

s2 IMG_9149 (2).jpg 「こんにちは」「わあ、誰か来た! 」「あなた、だあれ?」木に宿る精霊たちが会話しているように葉と葉とがこ すれ合い、チョロチョロと不思議な音色を奏でていたのだ。カツラの葉に囲ま れて、私はしばらくの間、小さなメロディを聴いていた。

カツラの名前は「蛇喰(じゃばみ)の千本カツラ」。樹齢約800年。クローバーとタンポポが群生する小高い山の上に立っている。登 り切ったところで振り返ると、真正面に鳥海山が見える素晴らしい場所だ。こ こから見た鳥海山は富士山の形に見えると、付近でも絶景の展望台といわれて いる。

無数のヒ コバエが絡まり合って太い幹を形づくるカツラは「千本カツラ」と呼ばれ日本 全国にあるが、中でも最大クラスとされているのがこのカツラだ。蛇を連想さ せることからおどろおどろしい異名がついたそうだが、地元では大蛇が株元に 住む山の神として崇拝されてきた巨樹である。立て看板によると、約350年前 に長崎から移り住んできた黒木一族が千本カツラ一帯を所有したとき以来、そ う呼ばれるようになった。言い伝えに因み、地元では毎年1月15日には幹に注 連縄をかけ、お神酒をあげて参拝するのが風習となっているという。本物の蛇 とは会えなかったが、蛇の抜け殻らしいものが幹についているのを見た。カツ ラを守護するという大蛇神が脱ぎ捨てていったのかもしれない。(2014年6月撮影)

s3 IMG_9263 (2).jpg鳥海山が正面に見える。