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鶴岡八幡宮の大イチョウ Gingko in Kamakura 

不死鳥のように蘇り
夢の成長をもたらす芽

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 ドンドンドーンッ。2010年3月10日。樹齢一千年の大イチョウのご神木が倒れました。地響きとともに雷が落ちたような大きな音がしたと地元の人が言っていました。かつて立っていた場所に大きな木がなくなることがこれほど喪失感を感じさせるとは......。
 当初、再生は難しいと心配されていましたが、1カ月後には新しい芽を出し始めました。その生命力の強さ! ちぎれたような幹の残骸からも、移植された幹からも葉が次々と出て、細い枝もぐんぐんと上に伸びています。芽吹きの姿に勇気づけられた人は多いでしょう。生長エネルギーが盛んな大樹の前に立つと、自分の夢にも成長の力を与えてくれるように感じてきます。
 そして今、現在の姿が右下の写真です。たった一本なのはなぜ? じつはこれこそ、このイチョウを蘇らせるヒミツ。鶴岡八幡宮の神主さんによると、この枝は将来、大木になる可能性のある一本だそうです。たくさんの芽が出ていた中から、専門家が調査し、選び出しました。木の栄養分をその一本だけに集中させるため、ほかの芽は全部取り除いたのだそうです。私が前に見た、木の根っこ全体をおおうように育っていたイチョウの葉はほとんど刈り取られ、この枝一本だけが残されたのです。現在も、新しい芽が出るとこまめに刈るようにしているのだそう。ほかの芽が出ていると、栄養が行き渡らなくて、結局どの芽も育たないことになってしまうからです。
 この小さな、細い枝がこれから太く、背も高くなっていくのを見つめていきたいですね。
 けれど......このイチョウが見上げるような大樹に戻る頃、今この世にいる人間は誰ひとり生きてはいません。
木の生命力の強さ、いのちの長さに圧倒されます。私たち人間は木に看取ってもらう存在なのだなあと思います。

◎樹種/イチョウ(イチョウ科)
◎樹齢/約1000年(爺杉)
◎樹高/約20m
◎幹周り/約6.7m
◎所在地/神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-31 鶴岡八幡宮内
(2012年6月現在)