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城願寺のビャクシン  Juniper in Kanagawa

上昇気流に乗って上ってゆく
約800年前に武将が植えた「勝利の木」


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s-20130126-byakusin joganji  zenntaiRIMG0003.jpg DATA of TREE
▽樹種:ビャクシン/別名イブキ(マツ科・常緑高木)
▽学名:Juniperus chinensis 
▽樹齢:800年以上
▽樹高:約20m/幹周り:約6m
▽所在地:神奈川県足柄下郡湯河原町城堀252 城願寺(じょうがんじ)
※国指定天然記念物

湯河原温泉に旅行に行ったら、会いに行ってほしい大樹です。 "木"なのに、動きまわるかのような姿。出会った瞬間に圧倒され、強い生命エネルギーを浴びることになるでしょう。

【木の特徴】
湯河原駅から徒歩10分。曹洞宗のお寺、城願寺へと向かう石段を上っている途中、木は見えない。鬱蒼とした鎮守の森が広がる中を歩く。「この石段の上に本当に巨樹が立っているのかな」と思っていると、突如姿を現した。大きなビャクシンが前のめりになりながら、勢いよく伸びていて、幹も枝もダイナミック! 幹はねじれ、らせん状に回転しながら上を目指しています。太い枝は真横に張り出し、右に向いたり、左に向いたり、素直にまっすぐ伸びる枝は見当たりません。しかも、私が鎮守の森と思っていたのはビャクシンの樹冠だったのです。枝葉がもくもくと空を覆って、自然が作り出した「大樹の門」といった姿でした。普段、大きな木の前に立つとホッとして、ゆったりとした安心感に包まれるものですが、この木の前では心が騒ぎます。胸の奥に隠していた何か、あきらめかけていた夢がむくむくと湧きあがり、もう一度挑戦したくなるようなエネルギーが込み上げてくるのです。勇気をくれる巨樹です。これから大きな一歩を踏み出そうとする人は会いに行ってみてください

★この木を見るポイント ⇒ らせん状に曲がりくねりながら昇っていく姿。

【歴史を伝える】
このビャクシンは、平安末期から鎌倉初期に活躍した武将、土肥実平(どひさねひら)が植えたと伝えられています。彼は城願寺の持仏堂(じぶつどう)をこの地に建てた人です。源頼朝に従った「頼朝七騎」の中心人物とされ、『源平盛衰記』や『吾妻鏡』にも登場します。平氏全盛の時代、石橋山の戦いにおいて、頼朝に従い、敗北に帰するが、臨機応変な作戦で主君を救ったと歴史にその名を残しています。城願寺は実平の菩提寺。境内には七騎(7人の武将)の木彫り像を祀る七騎堂があります。JR湯河原駅には実平夫妻の銅像があり、この地で愛され続けている武将です。実平が植えたビャクシンはすくすくと育ち、源氏と平氏の戦いを見つめ、室町、安土桃山へと続く戦乱の世を見つめ、江戸を見つめ、戦争を越え、ここに立っています。日本の歴史をつぶさに見つめながら、激しく、荒々しく、運命に抗い続けながらも、時を経て尚、天へと駆け昇るような勢いを感じます。

【ビャクシンの教え】
上昇気流に乗って、どこまでも昇れ!チャンスの風を逃がすなよ。

【この木に会いに行こう!】
JR「湯河原」駅下車。徒歩約10分。急な坂道、石段を上りきったところに立っています。

(2010年8月撮影)