建長寺のビャクシン Juniper in Kamakura
威風堂々たるビャクシンの幹に
木の精霊たちの顔を探してください
DATA of TREE
▽樹種:ビャクシン/別名イブキ(マツ科・常緑高木)
▽学名:Juniperus chinensis
▽樹齢:約750年
▽樹高:約13m/幹周り:約6.5m
▽所在地:神奈川県鎌倉市山ノ内8 建長寺(けんちょうじ)
鎌倉の巨樹めぐりのメインはここ、日本で最初の禅寺として名高い建長寺。山門をくぐり本堂に向かうと、堂々たるビャクシンが7本、迎えてくれます。ビャクシンの木はそのダイナミックな姿にまず圧倒されますが、とくに心に響く3本をご紹介します。
【木の特徴】
1本目は、本堂近くの最も大きいビャクシンです。建長寺が創建されたとき、開山した大覚禅師が植えたと伝えられ、推定樹齢は約750年。大地にどっしりと根を張り、幹の中程から大きく枝を三方向に伸ばして立っています。樹皮は波打ち、幹から突き出た大枝が空に向かって広がる姿は神々しくさえあります。(写真上)
2本目は、本殿の前、左手にあるビャクシン。木の精霊?が見えるんです。幹の中程、2つの目がこちらを見据えるかのように、はっきりとした顔の形。フクロウに似ています。長い歳月を生きてきた古木には神が宿る、と日本人は考えてきました。このビャクシンはまさにその姿を私たちに見せてくれる木だと思います。(写真左下)
3本目は、山門から向かうと右手に立つビャクシンです。こちらも樹皮に精霊の顔がいくつも刻まれているように見え、頂上にはなんと龍の姿をした枝が突き出ています。この木に棲む神さまが龍となって、天を駆け昇ろうとしているのかな、、、想像がふくらみます。(写真右下)
ビャクシンの木の下に立つと、生命エネルギーが降り注ぐような激しい気を感じます。今の自分の実力より遥かに高い目標を掲げたとき、実現の決意をこめて、会いに行きたい巨樹たちです。
★この木を見るポイント⇒ 幹の中、枝の形に「顔」が見える。探してみてください。誰かときっと出会えます。
【歴史を伝える】
建長寺は鎌倉五山の1つであり、禅宗の臨済宗建長寺派の本山です。1253(建長5)年、北条時頼(1227-1263)が建立しました。鎌倉にはビャクシンが多く、円覚寺、法戒寺、鶴岡八幡宮などにもありますが、ここ建長寺のビャクシンの大きさは特別です。「鎌倉イブキ」とも呼ばれ、地元の人々に愛されています。建長寺は創建以来、幾度も火災に見舞われ、創建時の建物は焼失して、ほとんどが江戸時代に建て直されたものです。境内に立つビャクシンだけが奇跡的に生きのび、現在も勢いは衰えることはない。激動の歴史を知る、命ある存在なのです。
【ビャクシンの教え】
炎に包まれても生きのびたビャクシンのように、人もまた、何度でも再生することができます。もしも突然の試練に倒れたときは、しばらく休んでいればいい。無理して起き上がることはないんです。心の傷を癒しなさい、カラダの傷を治しなさい。それから、ゆっくりと立ち上がる。急がなくてもいいのですよ。あなたが歩ける速度で1歩1歩、進んでいけばいいのです。魂の支えがほしいときは、私―ビャクシンに会いに来てください。
【この木に会いに行こう!】
JR「北鎌倉駅」駅下車。徒歩約20分。
(2010年5月撮影)