苦竹のイチョウ Gingko in Miyagi
故郷を思う人々の
希望の実りの乳銀杏
長い歳月を生きてきたイチョウならではの乳柱がいくつもいくつも垂れ下がっていることにまず驚きます。しかも長く、太い。最も太い乳柱は周囲1.7メートルもあり、その先が地中に根ざして新しい幹のように育っているものもあるそうです。
奈良、平城京が栄えた時代、聖武天皇の乳母の遺言で植えられたという言い伝えのあるイチョウ。現在は個人の屋敷の中に立っています。
「苦竹(にがたけ)」とは大正時代までのこの地域の名前。今はこのイチョウにちなみ、「銀杏町」となりました。一本の木が地名まで変えてしまうなんて、それだけ地元の人々の心に根ざしている大樹なのでしょう。
私が訪れたのは2011年秋。乳柱が涙を流しているようにも見えました。見上げると、乳柱のそばには可愛い実が鈴なりに実っています。毎年変わらず芽を出し、実をつけ、やがて金色に染まる。生の営みを一千年を越えて繰り返してきたイチョウ。大きな悲しみのあとの実りには希望の果実を見つけたような気がしました。
◎樹種/イチョウ(イチョウ科)
◎樹齢/約1200年
◎樹高/約32m
◎幹周り/約7.2m
◎所在地/宮城県仙台市宮城野区銀杏町
(2011年9月現在)