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宇宙樹の庭 メインイメージ121209更新

リスのラタトスクー宇宙樹にすむどうぶつたち

むかしむかし、ある星の上に、大きな木が1本、立っていました。その木がいつから立っているのか、だれも知りません。あんまり大きい木なので、だれも木のてっぺんを見たことがありません。あんまり大きい木なので、根っこがどこまでのびているか見当もつきません。本当に木が立っているのかどうかも、じつはわからないのです。大きすぎて、人間の目には見えないのですから。

私が知っているのは、その木にはいろいろなどうぶつたちがすんでいること。リス、ワシ、竜、4頭のシカ。今日から少しずつ、あなたにどうぶつたちのお話をしましょう。

最初にご紹介するのはリスのラタトスクです。名前の「ラタトスクRatatoscr」は「かじる歯」という意味です。北欧にすんでいるリスですから、私たちがよく知る、しっぽがシマシマのシマリスとは姿がちがいます。寒い北海道にすむエゾリスを想像すると近いかもしれませんね。

朝、ラタトスクは清らかな水のしずくで目覚めます。3人の運命の女神さまが毎朝、水をまく、じょうろの水が降ってくるからです。大きな根元に湧くウルズの泉からくんできた水はとても神聖な水です。心もからだも魂も、清らかに浄化してくれます。だから、前の日にどんなにイヤなことがあったって、ラタトスクはすがすがしい気持ちで朝を迎えられるのです。

女神さまたちが毎日水をまいてくれるおかげで、大きな木は永遠に枯れないと、むかしからいわれています。女神さまは3姉妹で、命あるものの寿命と運命を決めるのですが、そのことはまたいつかお話ししましょう。

あ、ラタトスクが走り始めましたよ。きょろきょろしています。上を見上げたり、下をのぞきこんだり。

木の上からは「早く上がって来いよー」という声。
根っこのほうからは「おまえ、俺よりあいつを選ぶのか!?」という声。

じつはラタトスク、木のてっぺんにいるワシと、根っこのところにいる竜ニーズへグの悪口を伝える役目をしているんです。ワシと竜はとても仲が悪くて、1日中、相手をこきおろす言葉をはき続けています。

木の頂上で、「俺さまがいちばん!」と思っているワシは、横柄な態度で竜をバカにします。
地界にすむ竜は、地獄の底からうめくようなしゃがれ声でワシをののしり続けます。

でも、大きな木の上と下、声がとどきませんから、ラタトスクの出番となるのです。

朝から晩まで、人(どうぶつですが)の悪口を聞いて、告げ口をするラタトスク。気がめいっちゃいそうですね。でも、ラタトスクにはやめることができないのです。どうして、こんなことをすることになったんでしょう。

あっちにもこっちにもいい顔して、あることないことをどちらにも告げる人って、私たちのまわりにもいますよね。悪意に満ちて言う人もいるけれど、どっちにもいい顔していないと不安でしかたない、気弱な心がそうさせている人もいそうです。

ラタトスクの本心はどこにあるのかな。そのうち、聞いてみましょうね。

2019.2.7