シラヌタの大杉 Ceder in Shizuoka
隣に立つ若杉と合体して成長する
堂々たる姿の連理のスギ
DATA of TREE▽樹種:スギ(ヒノキ科・常緑高木)
▽学名: Cryptomeria japonica
▽樹齢:約1000年
▽樹高:約41m/幹周り:約8.4m
▽所在地:静岡県賀茂郡東伊豆町大字奈良本 奈良本国有林
※「森の巨人たち100選」
【木の特徴】
「千手観音杉」の立つ場所から、さらに歩いてもう一樹、会いに行きたいのがこのスギ。連理(れんり)の姿をしていて、その不思議な形に惹きこまれました。隣りに立つ若いスギとくっついて成長しているのです。枯れた枝もあり、樹勢が旺盛ではありませんが、堂々とした太い幹、連理の姿、なんとも神秘的な巨樹でした。雪の山をぐんぐん歩いて、会いに行った2本のスギ。「巡り合いにありがとう」と奇跡のような出会いに感謝。いつかまた、あたたかい季節に、緑の山で会いたいな。(2015年2月撮影)
★この木を見るポイント⇒ 隣の若木と合体して成長している。
【歴史を伝える】
「連理」とは、1本の木が別の木と合体して成長したり、1本の根元から2~3本の幹が並んで成長する特徴のこと。その姿から"縁結び"のご利益のあるご神木が日本全国にあります。この木はとくに言われていないようですが、「連理」好きにはたまらない巨樹です。伊豆には天城湯ヶ島町に「天城太郎杉」があり、この木に次いで大きいスギとして「次郎杉」と呼ばれることもあります。
【この木に会いに行こう!】
千手観音杉から2キロ歩いて、奈良本国有林の中に立つ。/車の場合、シラヌタの池入口から約5分で大杉の入口に到着。そこから遊歩道を歩いて約15分。
伊豆奥地の千手観音杉 Ceder in Shizuoka
後光のようにも見える無数の枝
姿はまさに千手観音さま
DATA of TREE
▽樹種:スギ(ヒノキ科・常緑高木)
▽学名: Cryptomeria japonica
▽樹齢:約1000年
▽樹高:約27m/幹周り:約6.5m
▽所在地:静岡県賀茂郡東伊豆町大字奈良本
【木の特徴】
雪、雪、雪の中で、美しいスギの木と出会いました。天に向かって手をかかげるように無数の枝が伸びて、その姿はまるで千手観音さま。本当に美しい。角度を変えて見ると、また違う美しさがあり、四方八方に広がる枝々は後光が射すようにも見えてきました。
この日は、巨樹写真家の高橋さん主宰「東京巨樹の会」に参加して、伊豆半島、天城山南麓へ。今も出会ったときの感動をありありと思い出す巨樹ですが、ここまでの道のりは遠かった、、、。1人では絶対たどり着けない、伊豆半島最高峰の万二郞岳から直線距離で2キロほどの奥地、巨樹好きでもあきらめるほど不便な場所に立っているのです。この日は雪の予報でしたが、「山奥にある巨樹に2キロ(!)歩いて会いに行きます」と。雪の中をざっくざっくと歩きに歩いて、看板発見!「オバケスギの入口」。そして、ついに「千手観音杉」を見上げたときの感動は一生忘れられません。(2015年2月撮影)
★この木を見るポイント⇒ 千手観音の手のようにたくさんの枝が空に向かって伸びている。
【歴史を伝える】
今でこそ、「千手観音杉」とありがたい名前で呼ばれていますが、昔は「お化け杉」と名づけられていたそう。この木の美しさと裏腹な名前、色気も何もないということで、幹から何本もの枝が出ているから、千手観音にあやかって、高橋さんのお友だちが名づけたと聞きました。それが今では全国区の名前に!すごいことです。
【この木に会いに行こう!】
伊豆急行「片瀬白田」駅からシラヌタの大杉遊歩道入口まで車で30分。そこから徒歩で約25分。林道をしばらく歩くと、伐採から免れた小さな広場のような林があり、その中央に立っている。
大船渡の三陸大王杉 cedar in Iwate
人々を勇気づけた大きな杉の木
瓦礫の山を見下ろすように立っていた
DATA of TREE
▽樹種/スギ(スギ科)
▽樹齢/約7000年(伝承)
▽樹高/約20m
▽幹周り/約13.75m
▽所在地/岩手県大船渡市三陸町御喜来字杉下 八幡神社境内
※市指定天然記念物(1978年指定)
2011年3月11日、東日本大震災を生きのびた木をご紹介します。
【木の特徴】
大震災から約半年、9月に撮影した大王杉の姿です。樹齢約7000年とも伝わるこの木はとにかく大きい。こんもりと繁る樹冠、みずみずしい緑、どっしりとした太い幹。「大王」の名にふさわしく、御喜来(おきらい)漁港を見下ろす高台にそびえています。大震災の日、このスギの手前まで津波が押し寄せたと伝わります。私が訪れたときはまだ、海岸沿いを見下ろすとガレキが山積みでした。人の姿はなく、ガレキを片付ける重機の音だけが響いていました。下から大王杉を見上げれば、鎮守の森からにょっきりと顔を出し、杉にしては珍しい、まんまるい樹冠が緑いっぱいに広がって、地元の人を元気づけていました。地名の「杉下」はまさに、このスギの下、という意味でつけられたそうです。少し急な細い坂道と階段を登りきったところに大王杉は立っていますよ。(2011年9月24日撮影)
★この木を見るポイント⇒ とにかく大きいこと。
【歴史を伝える】
東日本大震災から約10年。多くの人があの日の悲しみを背負い、大切な人への思いを胸に生きていらっしゃることと思います。自然の恐ろしさを知った日々。津波をかぶって今なお立ち続ける木があります。木の直前まで津波が押し寄せ、建物の倒壊を防いだ木もあります。この大きなスギは東北の人々の生きる力となった木のひとつです。写真右下の眼下に見える細長い木は、津波をかぶっても生きのびたポプラの木。こちらも「ド根性ポプラ」と名づけられて、地元の人たちに愛されています。人間よりも遥かに長い歳月を生きる木は、3.11の記憶を伝える生き証人であり続けると思います。
【この木に会いに行こう!】
三陸鉄道「三陸」駅下車、徒歩約10分。大王杉がある場所までは階段をかなり上ります。
【スギの教え】
今、微笑むことができることに感謝する。
野中の一方杉 Cedar in 熊野古道
一つの方向にしか枝を伸ばさないから「一方杉」
那智山に心を向ける、継桜王子のご神木
DATA of TREE
▽樹種:スギ(スギ科・常緑高木)
▽学名:Cryptomeria japonica
▽樹齢:約800年
▽樹高:約40m/幹周り:約8.15m
▽所在地:和歌山県田辺市中辺路町野中 継桜(つぎざくら)王子社
※和歌山県指定天然記念物
【木の特徴】
参道を歩いて左手にある、ひと際大きなスギが左の写真。樹齢は約800年といわれています。
「一方杉(いっぽうすぎ)」という名前の由来はその枝の様子から。南方向、熊野本宮大社のある那智山に向かって、枝が伸びることから名づけられました。実際は、木の性質によるもののようです。ご案内くださった巨樹写真家のH.Takahasi氏によると、「南に面した、かなり急な斜面に立つため、南側に成長が促進された」と考えられるそう。一方向に伸びるその枝々はどれも太く、熊野の神さまのほうへ手を差し伸べるかのような姿は神秘的ですね。境内には5~6本のスギがあります。枝の向きをそれぞれチェックするのも楽しいかもね♪(2018年5月20日撮影)
★この木を見るポイント⇒ 枝の方向に注目を。熊野本宮大社の方向に枝が伸びています。
【歴史を伝える】
熊野古道、中辺路(なかへち)の神社「継桜王子社」の境内に立っているスギです。継桜王子の名前の由来ともなった物語が語り継がれています。平安時代の武将、藤原秀衡(ひでひら)夫妻が子供を身籠ったお礼参りをする途中、妻が赤ん坊を産み、その子を乳岩に置いて熊野詣を続けた。戻ってみると子どもは元気でいたという、熊野権現のご加護を表す桜の伝説です。この桜の木についてはまたいつか。
【この木に会いに行こう!】
熊野古道、中辺路(なかへち)の近露(ちかつゆ)王子から、徒歩約1時間30分。継桜王子社への道々、茅葺き屋根の「とがの木茶屋」で休憩を。とても親切な店主さんです。「どうぞひと休みしていってください」とおいしいお茶を入れてくださいました。近くにある、日本百名水の1つ「野中の清水」でのどをうるおすのもいいですね。
氷川の三本スギ Ceder in Tokyo
同じ根元から3本の幹が天を目指す
TOKYOで最も背が高い木
DATA of TREE
▽樹種:スギ(ヒノキ科・常緑高木)
▽学名:Cryptomeria japonica
▽英名:Japanese cedar
▽樹齢:約700年
▽樹高:約50m/幹周り:約7.5m
▽所在地:東京都西多摩郡奥多摩町氷川178 奥氷川神社
※東京都指定天然記念物
【木の特徴】
樹高50メートルという、東京で最も背の高い木といわれている。奥多摩駅に到着する少し手前、電車の中から樹冠が見えるので、気をつけて見ているといい。ホームからも見え、ひときわ背の高い木だとわかる。このスギのいちばんの特徴は、1本の幹が3メートルほどのところで3本に分かれ、それぞれが直立して立っていることだ。1本1本が太く、たくましい。注連縄はリボン結びをしたような結び方が可愛らしく、まるで蝶ネクタイをしたようにも見え、微笑ましくなる。このスギは兄弟杉だろうか、それとも父と母と子供だろうか。1人の人間がさまざまな顔を持つように、このスギは3つの姿を持っている。凛とした姿は、3つの異なる意志をしっかと貫く意志をもたらしてくれそうだ。(2010年7月撮影)
★この木を見るポイント⇒3本の幹がくっついて伸びている様子。電車の中から3本杉のてっぺんが見える。注連縄がリボン形で可愛い。
【歴史を伝える】
景行天皇の御代、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の折りに祀った社が起源と伝えられている。境内は狭く、少し寂しい感じもするが、地元の人々の日常に溶け込み、親しまれている神社のように思えた。
【この木に会いに行こう!】
JR「奥多摩」駅下車、徒歩約5分。駅舎を出て左手に進む。
奥多摩駅に着くと、都心とは別世界の森の匂いがする。この木だけを目指して歩くのはもったいない。1日奥多摩散歩をするつもりで訪ねてはいかがだろうか。