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針山の天王桜(てんのうざくら)Cherry tree in Gunma

水鏡がつくり出す幻想的な円桜  
風のない日に会いに行きたい 

sIMG_3515.jpgsIMG_3736.jpgのサムネイル画像


DATA of TREE
▽樹種:サクラ(バラ科・落葉高木) 
▽学名:Prunus
▽樹齢:約300年(県指定天然記念物)
▽樹高:約10m/幹周り:約5.2m
▽所在地:群馬県利根郡片品村大字花咲
(2013年5月現在)

【木の特徴】
田んぼの水面に樹冠が映り、まんまるい形に見える。こんなに美しい花の円を見たことはなかった。

長い間、桜の巨樹に心惹かれなかった。「桜を見に行こう!」と自ら意識して、初めて出会ったのがこの「天王桜」だった。美しかった。群馬生まれの友人が「まんまるい桜なんだよ」と教えてくれたが、最初はピンとこなかった。自分の目で見てやっと納得した。桜は小高い丘の上に立ち、手前から見るとわからないけれど、丘を登っていくと向こう側には田園風景が広がっている。その田んぼの水面にピンク色の樹冠が映り、まんまるい形をつくり出していた。上半分は本物の桜、下半分は水面の桜。青い空、青い水面、そこに淡いピンク色の桜の木。ほんの静かな風でも水面は揺れるので、映る桜も揺れて、くっきりとは見えない。ところが一瞬、風がとまった時、水面は一面の鏡となって、完璧な姿で桜を映した。樹冠は完全な円となり、形を崩すことなく桜花のひと枝ひと枝を映し出していた。

この桜をすっかり気に入ったのは、夜もまた一層、美しく輝くからだった。夕暮れになるとライトアップされ、淡いピンク色の花びらが黄金色や濃い紅色をおびて輝き出す。田園のほうから見るとオレンジ色に光る桜がまんまるく映り、なんとも幻想的な姿となる。濃紺色の闇夜、まるで地上に月が降りたようなのだ。桜、夜空、星、田園、そして、水という自然美を集約した夜桜一樹。他では決して見られない光降る桜に酔いしれたい。

★この木を見るポイント⇒風のない時に行くといい。水面がゆれないので、完全な水鏡となり、桜の円も完璧になる。花の見頃は4月下旬~5月初旬

【歴史を伝える】
桜の種類はヤマザクラ。持ち主はこの近くにある蕎麦屋「天五庵」店主の千明長治氏で、西暦1818年(文化15年)に木の根元に石の祠を祀ったことが伝えられている。その時にはすでに百年が経っていたとのことから樹齢三百年を超えるといわれている。

【この木に会いに行こう!】
関越道沼田ICから約35分