屋久島の縄文杉・ウィルソン株 Cedar in Yakushima
原始の森の
母なる木と父なる株
森の中には、木が守る「場」がそれぞれにあると知ったのは屋久島でした。原生林の森を行く道は険しく、何度も挫けそうになりながら縄文杉のところまで辿り着くと、どこからか「よくいらっしゃいました」という女性の声が聞こえてきました。深く、あたたかな声の響きは今でも忘れることができません。その幹には優しい目と口とが浮かんでいました。右側は横顔に見え、人間の行けない森に棲む者たちを見守っているようです。森の母なるエネルギーで私は深い安堵感に包まれていきました。
ところが、ウィルソン株に向かって歩き始めると男性的なエネルギーが漂ってきます。森を流れる「気」の質が確実に変わったのを感じました。幹が伐られた切り株なのに痛いほどの激しい気が満ちているのはなぜ? そう思いながら株の中に入ると祠があり、ご神水が湧き、荘厳な時空が広がっていました。上を見上げると空が見え、小さな杉が次々と伸びています。次世代へと命をつなぎたい親株の願いと、新たな命の息吹きとが交流し合い、力強い気を放っていたのかもしれません。
◎樹種/スギ(スギ科)
◎樹齢/推定約7200年
◎樹高/30m
◎幹周り/16・4m
◎所在地/鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦
(2002年10月現在)