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来宮神社のクスノキ Camphor in Shizuoka

白ひげの仙人様が宿っている大楠
ひと回りしながら一つだけ願いをかけて

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s-2010_0818_125644-RIMG0121 kinomiya hebi.jpg 来宮神社には木の神様がいらっしゃると私は信じています。じつはお目にかかったことがあるのです。ちらっとですけれど......。
仙人伝説によると、今から百二十年前、この大楠を伐ろうとしたところ、突然白髪の老人が現れ、両手を広げてさえぎりました。ノコギリは真っ二つに折れ、そのとたん白髪の老人は消えてしまったといいます。江戸末期まで名前は「来宮」ではなく、「木宮」と書かれていたといいますから、まさに木の神様が宿る場所と思います。
この大楠をひと回りすると寿命が一年延び、誰にも言わずに一つ願いをかけると叶うといわれています。私はこの楠と会うとまず、ゆっくりと幹を眺めます。コブだらけのゴツゴツした樹皮に龍やゾウ、貝など様々な生き物が浮かび上がり、その時の自分に最も必要な力を与えてくれる形を見つけます。それからぐるっと回って反対側、大きな洞穴があいた場所で願いを一つ唱えます。そこはまるで子宮の入り口のようで、新たな誕生のエネルギーを感じるからです。それから鳥居近くの楠にも手を合わせ、再会への感謝を告げ帰路につくのです。クスノキの仙人様とあなたも会えるといいですね。(2010年8月現在)

◎樹種/クスノキ(クスノキ科)
◎樹齢/約2000年以上
◎樹高/約20m
◎幹周り/約23.9m
◎所在地/静岡県熱海市西山町43-1 来宮神社
※出世大明神の社を守護するヘビさん 

下写真:鳥居をくぐったすぐのところに立つクスノキにも、強いエネルギーを感じます。

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草薙神社のクスノキ Camphor in Shizuoka

神剣の力を秘め
大地を駆けるクスノキ

s-RIMG0139kusunoki main.jpg この物体は何ものなのか? 生きているのか枯れているのか?
と疑問に思ってしまうほど不思議な形をしたご神木です。だいたい上に向いて立っていません。物凄い迫力で、木の塊のようなものが横に這っています。だから、いつものように木を見上げることはできません。失礼とは思いながら、ご神木を上から見下ろす姿勢になってしまいます。
この木の幹の内側はすでに枯れて、外側の樹皮だけを残した状態。それでも枝は伸び続け、緑の葉を湛えています。
しばらく眺めていると、龍の姿に見えてきました。顔をぐいっと前に向け、大地を駆け、空を舞う龍神がご神木に形を変えてこの世に残ったような。とにかく力強い気を感じるクスノキです。
クスノキが立つ土地は三種の神器のひとつ、「草薙の剣」の故郷といえる場所だそうです。日本武尊が火攻めにあった時、剣を抜いて草をなぎ倒し、難を逃れたという伝説が残っています。ご神体の剣はその後、天武天皇の勅命で熱田神宮に移され、現在に至ります。もしかすると、クスノキは神剣の現し身であるのかもしれません。


◎樹種/クスノキ(クスノキ科)
◎樹齢/約1000年
◎樹高/約25m
◎幹周り/約6m
◎所在地/静岡市清水草薙349 草薙神社
(2010年3月現在)

宗像大社のクスノキ Camphor in Fukuoka

自然の神々と交流する
鎮守の杜の道

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「この辺り一帯、山そのものがご神体なのですよ」と地元の人に聞いて訪れた宗像大社。一日ここにいて、お気に入りの木を見つけ、ゆったりと寄り添っていたい空間です。
とくに神秘的な気を感じたのは高宮祭場へと向かう道。本殿から「鎮守の杜の道」に入り、男女の絆を深めるご神木「連理の樫」にお参りして、「悠久の道」を歩いて高宮へ。紙垂をくぐって参道に入ると、しんと澄んだ空気、清らかな緑の匂い......。美しい光が射しこむ広場があったり、クスノキのご神木がそびえていたり、気持ちのいい緑の小道が続きます。
高宮は宗像大神ご降臨の地とされ、古式にのっとった神籠(ひもろぎ)、磐境(いわさか)の古代祭が今も行われています。神籠とは木や森を、磐境は石や岩を神の依代として祀ったものです。
自然の神々を信仰する儀式が脈々と続く場所だからでしょうか。木も石も水も風も、あらゆる存在が魂をもって、語りかけてくる声が聴こえてきます。幻か現実か、自分の耳で確かめてみてください。
 
◎樹種/クスノキ(クスノキ科)
◎樹齢/不明
◎樹高/不明
◎幹周り/不明
◎所在地/福岡県宗像市田島2331 宗像大社
(2009年6月)

青蓮院のクスノキ Camphor in Kyoto 

大枝で夢をつかみとる
威風堂々たるクスノキ

s-DH000030seirenin kusunoki.jpgseirenin kusunoki yoko.JPG 十年以上会っていないのに心通い合い、信頼感を抱き続ける友人のような存在......。
このクスノキはまさにそんな強烈な印象があります。八坂神社を出発して、円山公園を通り知恩院へ。そこから北へ少し歩いたところのお寺、青蓮院の前に立つ大樹です。
境内の様子はほとんど思い出せないのに、クスノキの姿はくっきりと焼きついています。根はうねるように伸び苔むして尚、大地をがっちりとつかみ、幹から出た大枝は何かをつかみとろうとするかのように広がっていく。威風堂々たる姿に自分を支えてくれる大らかさを感じます。出会ったのは8年以上も前。今、再び会うと、クスノキはどんな姿を見せてくれるでしょうか。

◎樹種/クスノキ(クスノキ科)
◎樹齢/不明
◎樹高/26.1m
◎幹周り/5.94m
◎所在地/京都市東山区粟田口三条坊町69-1
(2006年4月現在)

法隆寺のクスノキ Camphor in Nara

木は男か、女か?
両性具有か?

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 「木」は男か女か、と考えたことはないだろうか。童話や絵本に登場する木は多くがおじいさんで、人間が困っていると良い知恵を授けてくれる。おばあさんは少ない。深い森に迷い込んでしまった子どもを怖がらせる木々も幹に男の顔があり、鋭い目でにらんだり、口を大きく開けておどかしたりする。ヨーロッパではシラカバやブナが森の女神と呼ばれて女性性をもつ木もあるが、なぜか日本では圧倒的に男が多い。しかも、老人である。樹齢何百年と生きる長寿の木を前にして、我々の祖先は「仙人」「森の賢者」「森の長老」といった姿をそこに見たのかもしれない。私が木をテーマに書いていると言うとけげんな顔をされることが多い。「若い女性なのにお珍しい」という表情である。今はもう若くはないが、日本人に「木=おじいさん」というイメージがあるから不思議に思われるのだろう。
 さて、このクスノキ。男か、女か? 法隆寺の東大門を出て夢殿に行く途中、突然現れる異形のクスノキ。なんだ、この力強い気は!? 思わず叫んでしまうほど圧倒的なパワーを放っていた。木ならぬ気、生命エネルギーというべきもの。幹が大地から斜めに生え、倒れんばかりに空を目指し、枝先は上のほうへと向かっている。樹皮は幾筋にも割れ、ゴツゴツと荒れて、激しい生き様を感じる。倒れそうになり傷つきながらも戦い続ける戦士のようだ。あまりの勢いに圧倒されながらふと根元を見ると、にょきっと小さな幹が伸びていた。男性器に似ている。樹皮には女性の足の間を思わせるダイヤ形。これほどあからさまに肉体をさらけ出した木を見るのは初めてだった。このクスノキは男でもあり、女でもあろう。生々しい性のエネルギーを放っていた。木がおじいさんだと思いこむのは間違いだと確信した。木のなかに、こうした自分の肉体と似た形を見ると、木も人間も同じ「生命―いのち」なのだと愛おしさがこみあげてくる。木が人間に似ているのか、人間が木に似ているのか、どちらだろう。以前、肺の血管をそのまま取り出した標本を見た時、落葉樹の枝ぶりにそっくりだったことに驚いた。私の肉体の中に「木」が存在している。この世に生まれる生命体は宇宙の法則によって同じように形づくられるのだ、と。私にあるものがこのクスノキにあるのも不思議でもなんでもない。
 見れば見るほど、男にも女にも似ている。強烈な性のエネルギーを放ち続けるクスノキ。しかし、この木のまわりはしんと静まりかえっていた。千四百年の時を経て尚、朽ちることなく立つ木の建築、法隆寺。淡々と流れていく時の中で、ほとばしる命の熱さを感じられる空間である。

◎樹種/クスノキ(クスノキ科)
◎樹齢/不明
◎樹高/不明
◎幹周り/不明
◎所在地/奈良県生駒郡斑鳩町 法隆寺内
【世界文化遺産・法隆寺のホームページはこちら
(2008年10月現在)


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