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日枝神社の大イチョウ Ginkgo in Tokyo

大震災、戦火を生きのびたイチョウたち 
境内でご神木めぐりができますよ 


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DATA of TREE
▽樹種:イチョウ(イチョウ科・落葉高木) 
▽学名:Tilia miqueliana 
▽樹齢:①男坂参道:約300年/②鳥居茶寮前:約200年/③末社横:不明
▽樹高・幹周り:30m・5m/20m・3m/不明
▽所在地:東京都千代田区永田町2-10-5 日枝神社


東京都内にも思いのほかたくさんの巨樹があります。推定樹齢約300年を超えるものも多く、大震災、戦争を生きのびた貴重な木もあり、今も元気に歴史を伝えています。コロナ禍が落ち着いたら、「TOKYOご神木めぐり」を再開したいと思います。もう一度、いちばんに会いたいご神木は東京の中心、赤坂にある日枝神社のイチョウたちです。

【木の特徴―乳柱が垂れ下がる】
とくに会いたいのは、男坂参道の鳥居のそばに立つ、大きなイチョウのご神木(写真上)。どっしりと根を張って、空高く伸び、威風堂々と立っています。樹齢は約300年。その間には関東大震災、東京大空襲がありました。炎をくぐりぬけてきた木の多くは黒焦げや亀裂などが樹皮に見られますが、このイチョウには目立った傷はありません。幹にはイチョウの古木に見られる「乳柱(ちちゅう)」がいくつも垂れ下がり、長い歳月を生き抜いてきたことがわかります。古木とはいえ、年老いた印象も全くありません。根元からは新しい新芽が次々と伸びて、強い生命力が漲っています。この木の下に立つとホッとして、見守られているような、"安心感"が沸いてくるご神木です。

地元の人たちからもとても愛されているのがわかります。この日は早朝、会いに行ったのですが、ランニング中のおじさん、幹に手を当てて目を閉じ、しばらく過ごしていました。次にはサラリーマン姿の若い男性が木を見上げ、手を合わせて一礼、「行ってきます」とあいさつして去っていきました。毎日の習慣なのかな。大きな木に触れ、その生命エネルギーをいただく感覚は誰もが感じるだろうなあ。自分が住む土地に根づく木なら、なおさら身近に感じるのでしょうね。

境内には他にもイチョウがたくさん立っています。鳥居茶寮前には樹齢約200年のイチョウ、末社の横に立つ細身のイチョウ(写真下)も注連縄が張られたご神木です。一般の参拝客は踏み入れることのできない鎮守の森にも大きなイチョウがあるとか、、、境内でご神木めぐりができる楽しい神社です。

【歴史を伝える】
1945(昭和20)年5月、大空襲によって日枝神社の建物は末社山王稲荷神社を残してことごとく焼失しました。現在の建物は約10年の歳月をかけて、1958(昭33)年に再建されたものです。本殿では狛犬ではなくて、お猿さん(神猿像)が迎えてくださいます。猿は山の守り神。「猿」は「えん」とも読むことから、縁結びのご利益。また、「さる」は「まさる(勝る、魔が去る)」として、勝運を呼ぶ神社としても信頼されています。

【この木に会いに行こう!】
東京メトロ・千代田線「赤坂」駅出口2番から徒歩3分、南北線、銀座線「溜池山王」駅出口7番から徒歩3分など。

【イチョウの教え】
勝利は、平常な心をもった人のもとに訪れる。


(2016年6月撮影)

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明治神宮の夫婦楠 Camphor in Tokyo

2本のクスノキが仲よく並ぶ「縁結びの木」  
夫婦円満、家族の幸せを守ります 


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DATA of TREE
▽樹種:クスノキ(クスノキ科・落葉高木) 
▽学名:Cinnamomum camphora 
▽樹齢:約100年
▽樹高:約25m/幹周り:約6m
▽所在地:東京都渋谷区代々木神園町1-1 明治神宮 本殿前

1920(大正9)年、明治神宮が創建当時に献上され、本殿前に植えられた2本のクスノキ。「夫婦楠(めおとくす)」と呼ばれて、縁結び、夫婦円満、家族の健康安全のご加護をくださるご神木として親しまれています。

【木の特徴】
原宿駅から鳥居をくぐり、鎮守の森をのんびり歩いて本殿へと進むと、まんまるい樹冠をしたクスノキが見えてきます。注連縄で結ばれて立つ姿は手をつないだ夫婦みたいです。離れて見ると、こんもりと繁った樹冠はまあるくて、1本のクスノキのように見える姿も、"夫婦一体"の象徴のようです。私が訪れたとき、ちょうど神官さん、花嫁さん花婿さん、家族の方々が夫婦楠の間を通られ、ご縁が強く結ばれていくように見えました。
★この木を見るポイント⇒ 本殿への入口から見ると、まるで1本に見える。近くに寄ると2本が並んで立つ。

【歴史を伝える】
原宿駅の周辺も大きく変わりましたね。久しぶりに行くと、駅から明治神宮への道が少し近くなったように感じました。大きな鳥居をくぐって参道を歩く、両脇に鎮守の森が広がります。ここは人が創った森です。かつては荒れ地だったこの地に森を創ろうと、全国から奉献された約十万本が十一万人もの人々の手によって植えられました。森づくりの計画を立てるにあたり、林学博士の本田静六氏や造園学の祖といわれる上原敬二氏たちが主木に選んだ樹種のひとつがクスノキでした。そのほか、カシ、シイなど、もともとこの地域に生育していた木をメインにしたことで、これほどの緑豊かな森となりました。木々は今では人の手で管理をしなくても、自らの力で成長し、美しい森を保ち続けています。

【夫婦楠の教え】
愛すること、信じること、そして、感謝することをこの2本のクスノキは教えてくれます。あなたと出会えたことに「ありがとう」、そばにいてくれて「嬉しいよ」。時には声に出して、伝えてみませんか?

【この木に会いに行こう!】
JR山手線「原宿」駅から右手すぐの明治神宮境内。本殿の夫婦楠まで徒歩約5分。

【クスノキとは?】
クスノキは"スサノオノミコトの眉毛"。『日本書紀』巻第一神代上に書かれてあるんです。素戔嗚尊(スサノオノミコト)が出雲の国で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したあとの様子として。「スサノオノミコトが、ヒゲを抜いて散らすと<スギ>になり、胸毛を抜いて散らすと<ヒノキ>になり、お尻の毛は<マキ>になり、眉毛は<クスノキ>になった」。これらは日本に自生する木々。神さまのカラダから日本の木は生まれたと思うと楽しいですね。

(2009年5月撮影)

氷川の三本スギ Ceder in Tokyo

同じ根元から3本の幹が天を目指す  
TOKYOで最も背が高い木 


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▽樹種:スギ(ヒノキ科・常緑高木) 
▽学名:Cryptomeria japonica
▽英名:Japanese cedar  
▽樹齢:約700年
▽樹高:約50m/幹周り:約7.5m
▽所在地:東京都西多摩郡奥多摩町氷川178 奥氷川神社
※東京都指定天然記念物

【木の特徴】
樹高50メートルという、東京で最も背の高い木といわれている。奥多摩駅に到着する少し手前、電車の中から樹冠が見えるので、気をつけて見ているといい。ホームからも見え、ひときわ背の高い木だとわかる。このスギのいちばんの特徴は、1本の幹が3メートルほどのところで3本に分かれ、それぞれが直立して立っていることだ。1本1本が太く、たくましい。注連縄はリボン結びをしたような結び方が可愛らしく、まるで蝶ネクタイをしたようにも見え、微笑ましくなる。このスギは兄弟杉だろうか、それとも父と母と子供だろうか。1人の人間がさまざまな顔を持つように、このスギは3つの姿を持っている。凛とした姿は、3つの異なる意志をしっかと貫く意志をもたらしてくれそうだ。(2010年7月撮影)

★この木を見るポイント⇒3本の幹がくっついて伸びている様子。電車の中から3本杉のてっぺんが見える。注連縄がリボン形で可愛い。


【歴史を伝える】
景行天皇の御代、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の折りに祀った社が起源と伝えられている。境内は狭く、少し寂しい感じもするが、地元の人々の日常に溶け込み、親しまれている神社のように思えた。

【この木に会いに行こう!】
JR「奥多摩」駅下車、徒歩約5分。駅舎を出て左手に進む。
奥多摩駅に着くと、都心とは別世界の森の匂いがする。この木だけを目指して歩くのはもったいない。1日奥多摩散歩をするつもりで訪ねてはいかがだろうか。

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宇津貫・熊野神社のラッパイチョウ Ginkgo in Tokyo

ラッパ状になった葉っぱを見つけて! 
国内でもめずらしい異変種のイチョウ  

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DATA of TREE
▽樹種:イチョウ(イチョウ科・落葉高木・雄株) 
▽学名:Ginkgo biloba 
▽樹齢:約100年(正確には不明)
▽樹高:約25m/幹周り:約2.12m
▽所在地:東京都八王子市宇津貫町 宇津貫(うつぬき)熊野神社
※皇太子殿下御成婚記念樹1924(大正13)年1月26日 帝国在郷軍人会由井村分会) 

【木の特徴】
普通は扇形をしている葉が"ラッパ状"になっているイチョウの木。扇形をくるんと丸めたような葉をところどころに見つけることができます。年によって、その数は多かったり少なかったり。枝についた葉で見つけられない時は地面に落ちている葉を探すと見つかるかも!世にもめずらしい葉っぱをつけるイチョウの木。ラッパ、ぜひ、見つけてみてください。(2010年8月18日撮影)

★この木を見るポイント⇒ラッパ状の葉。左上写真の中央あたり、扇形の両端が丸まっている葉が見えませんか。

【歴史を伝える】
この神社の狛犬は「人面狛犬」と名づけたくなるほど、不気味な顔をしています。手足はなく、鼻や目のあたりは人間そっくり! 由来を記した看板によると、明和2年(1765)に造られたという長い歳月をここで過ごしてきた狛犬です。境内には寛延4年(1751)に建てられた角石塔もあります。1924(大正13)年1月26日、皇太子殿下御成婚記念樹として植樹されました。

【ラッパイチョウとは?】
ラッパ状の葉を各枝でつけるのが特徴。国内でも数本しか確認されていない変異種のイチョウ。奈良県宇陀郡の春日神社(保護樹木)、島根県篠山市の医王寺(県指定天然記念物)、出雲市大社町の知西寺など計十数本が確認され、天然記念物などに指定されています。ラッパ状の葉の出現割合が多いほど、植物学的に貴重とされています。この宇津貫・熊野神社のラッパイチョウは巨樹写真家の高橋弘さんが発見しました。※参考資料:読売新聞2003年9月13日付
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【この木に会いに行こう!】
JR横浜線「八王子みなみ野」駅から徒歩15分。

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妙光院のボダイジュ Linden tree in Tokyo

かつて名木百選に選ばれていた菩提樹。幹は折れましたが 
根元から"ひこばえ"が生え、ハート形の葉がキラキラキラ 


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▽樹種:ボダイジュ(シナノキ科・落葉高木)
▽学名:Tilia miqueliana 
▽英名:Linden tree
▽樹齢:不明
▽樹高:ひこばえが数本集まる/幹周り:2~3㎝
▽所在地:東京都府中市本町1ー16ー13 妙光院
※東京都府中市の名木百選№78(2008年台風により倒れる)


【木の特徴】
かつては「名木百選」に選ばれるほど、美しい木だったのでしょう。しかし、2008年の台風で倒れたそうです。私が訪れたのは2010年、会うことができませんでした。今、この木が立っていた場所からは"ひこばえ"が何本も生え、葉を繁らせています。いつか、ひこばえのどれかが大樹になる日は数十年後か、百年後か・・・。このお寺のまわりに住む子供たちは大きくなった菩提樹に会えるかもしれませんね。ボダイジュはハートの形をした葉が特徴です。ひこばえの小枝からキラキラと、若緑色のハートが出ているのを見てください。(2010年7月撮影)
★この木を見るポイント⇒ひこばえ、ハート形の葉

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【歴史を伝える】
妙光院は、貞観元年(859)、眞如法親王の開山、真言宗のお寺です。御本尊は延命地蔵菩薩像。多摩八十八か所霊場23番札所。お寺の裏門を出ると、「珈琲・菩提樹」という名前のカフェがありますよ。かつて大樹だった頃のこのボダイジュに思いをはせながら、コーヒー1杯いただくのも素敵な時間です。

【この木に会いに行こう!】
JR「府中本町」駅下車。徒歩約5分。大国魂神社のすぐそばです。


おまけ【日本の菩提樹・インドのボダイジュ】 
日本のボダイジュは、お釈迦様が悟りを得た木とは違う種類です。インド仏教のボダイジュはクワ科で、ガジュマルやアコウなどの仲間、気根をたくさん垂らす常緑高木の「インドボダイジュ(学名:Ficus religiosa)」です。一方、わが国のボダイジュは落葉高木。サンスクリット語の「ボーディ・ヴリクシャ(Bodhi-vrksa)」を漢訳したもので「悟りの木」という意味。しかし、釈迦の教えがインドから中国にもたらされた時、中国の風土ではインドボダイジュが育たないため、葉の形が似たシナノキ科の木が代わりに寺院に植えられました。そのシナノキが日本への仏教伝来後、鎌倉時代の僧、栄西(1141-1215)によって、仏教の聖樹ボダイジュとして伝えられ、以来、わが国ではシナノキ科の木が「ボダイジュ」と呼ばれるようになりました。つまり、仏教のボダイジュとは何の関係もない木なのです。

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